mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

ジャズ史から見落とされがちなアルバムです!

Dizzy GillespieDizzy Gillespie & The Double Six of Paris』(Philips)

 


Personnnel;

Dizzy Gillespie(tp,vo),

 

The Double Six(cho):

  Mimi Perrin, Claudine Barge,

  Christiane Legrand,

  Ward Single, Robert Smart,

  Jean-Claude Briodin,

  Eddy Louise(Louiss)


Bud Powell(p),

Pierre Michelot(b),

Kenny Clarke(drms)


James Moody(ts),

Kenny Barron(p),

Chris White(b),

Rudy Collins(drms)


Lalo Schifrin(arr)

 

recorded in New York, Chicago, Paris 1963

 

 

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ビバップの推進者の一人ですが、チャーリー・パーカーとは異なる道を歩む事になりました。

 



ナット・ヘントフのライナーノーツを見ますと、1963年に2つのリズムセクションにディジーを加えた録音をパリとアメリカ(シカゴとニューヨーク?)で行い、ラロ・シフリンのアレンジに基づくヴォーカリーズ・グループの録音を録音して、オーバーダビングしたもののようです。


1963年はディジーは翌年のアメリカ大統領に立候補を表明しました。

 

ニューポートジャズ祭でのディジーのコンボの演奏で、ジョン・ヘンドリクスが「Vote Dizzy」という曲が演奏されています。

 

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実際に作成されたポスター。実際に立候補には至りませんでした。

 


ちなみに1963年7月のニューポートジャズ祭は7月に行われていますから、その後にフランスに渡って録音している事になりますね。


さて、肝心の内容はバド・パウエルケニー・クラークと言った旧友との懐メロ大会ではなく、フランスのヴォーカリーズ・グループ「ダブル・シックス」を加えたじつにユニークなもので、バップ第一世代の演奏(一部は、ディジーの当時のスモール・コンボのメンバーとの演奏です)と、ラロ・シフリンのアレンジが施されたダブル・シックスの精妙なコーラスは実によく合います。

 

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ダブル・シックス。オルガン奏者として有名なエディ・ルイスもメンバーでした。

 


どういう経緯でこのような企画が持ち上がったのかはがわかりませんが、天性のお祭り男であるディジーの事ですから、何でも乗ってしまうんでしょうね。


バド・パウエルの演奏もかつてのテクニックは全くなくなってますが、実に的確です。


ライナーノーツに書いている事をそのまま信じますと、とてもオーバーダビングして作ったように聞こえないので、驚きますね、これ。


コーラス部分はどうやら一日で録音がしたらしいんですけども、ウィキペディアに書いてある、1963年の7月8日、パリのEuropasonor Studiosの録音というのは、コーラスの録音なのかもしれないですね。


ダブル・シックスは、ミニ・フェリンによって結成されたヴォーカラーズ・グループですが、参加しているクリスティアーヌ・ルグランは、作曲家ミシェル・ルグランの姉で、自らも「スイングル・シスターズ」というグループを結成しています。

 

スイングル・シスターズには、MJQとの共演盤『Place Vandomê』があり、コレもオススメです。


従来のジャズ史的な視点からは見落としがちな逸品ですね。

 

 

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ヴォーカルから現在のそして過去の遺産を俯瞰する好著。

後藤雅洋『一生モノのジャズ・ヴォーカル名盤500』(小学館新書)

 


1967年、すなわち、ジョン・コルトレインが亡くなった年から営業している、最早都内でも最古参のジャズ喫茶の1つとなった四谷「いーぐる」の店長にして、屈指のジャズの論客である、後藤雅洋氏の新著。

 


『一生モノ〜』と題した著作はすでに存在し、そこでもヴォーカルアルバムは紹介されているが、本著はタイトル通り、ヴォーカルに特化した、コレまでの氏の著作としても珍しい著作となった。

 


ビリー・ホリデイエラ・フィッツジェラルドメル・トーメといった、私たちのよく知っているジャズヴォーカルの名盤も紹介されているのだか、本作のユニークさはそこにはとどまらず、スティーリー・ダンカーリー・サイモン、果てはポール・マカートニー、レディ・ガガまでもが紹介されいるところ。

 


ジャズであろうと、ソウル、ロックであろうと、ヴォーカルというのは、歌っているという事自体は全く同じであり、そこがジャズとそれ以外のジャンルを横断しやすい(而してそれは得体の知れないものにもなり得る)という点に氏は注目したラインナップになっている。

 


既に、これまでの著作でも、スティングやジョニ・ミッチェルブリジット・フォンテーヌのアルバムを「ジャズアルバム」として紹介してきた氏の考えを更に推し進めたのが本著で、実に楽しく読んだ。

 


美空ひばりザ・ピーナッツリンゴ・スターまでもが登場するバラエティの広さは、ジャンルについての固定観念の強い人には外道扱いであろうが、いろんなジャンルの音楽を縦横無尽に楽しむ人々にとっては愉快極まりないラインナップである。

 


私もそれなりにジャズは聴いてきたつもりだが、ここに紹介されているアルバムの半分も聴いていないのでありました。

 


とりわけ氏が強調するのは、近年のジャズアルバムにおけるインストとヴォーカルのフラットさであり、それがまたしても周辺音楽を貪欲に取り込んでいき、またしてもそれがジャズを変貌させていくという、ジャズが本然的に持ち合わせている性格が、ヴォーカルに注目しているとハッキリと見えてくる事である。

 


現在のジャズの動向を知る上でも、過去の巨人たちの明唱を聴く上でも大変有益な好著。

 

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エリントンすごいぜ! vol.8(再)!!

エリントン すごいぜ!vol.8(再)

キャピトル時代のエリントンを聴く 後編

 

4月にやる予定でした、第8回目、行います。

 

大変厳しい状況ですが、ネット配信による権利の発生の複雑さを考えると、どうしても配信は困難と考えました。

 

不織布マスクは某所で購入いたしましたので、ご希望の方は当日申し出てください。

 

ムリのないご参考で、よろしくお願いします。

 

McLean Chance

場所 夜学バーbrat

台東区上野 2-4-3 池之端すきやビル3F

JR御徒町東京メトロ 上野御徒町上野広小路湯島駅などなど最寄り駅多数!

日時 6/6 open 13:30 start 14:00-16:30

料金 800+2drinks おやつの持ち込み可は継続いたします。夜の営業の支障とならないモノにしてください。ドリンクは不可です。おやつセットはご購入できます。

 

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フリースタイルDJのセットリストです。

お客さんゼロかな?と思ってましたが、3人も来てくれました。ありがとうございます!

 

以下がセットリストです。

 

最初と、ビーフハート、オーネットをかけるのを直前に決めただけで後はその場でiPhoneに入っている曲をかけました。

 

90分強です。

 

ビーフハート→オーネットに持っていくので、どうしても後半が厳しめな選曲にならざるを得なかったですね。

 

もっとまったりしたのもやりたいです。

 

一曲目はブラックミュージックの好きな志村けんさんに捧げ、ビル・ウィザースへの追悼といたしました。

 

1時間早く終わってしまいましたが、クラブではないので、これくらいでいいと思いました。

 

次回はvol.8を行います。

本日のリスト

 

1.Bill Withers「Use Me」

2.Four Tops「I Can’t Help Myself」

3.Junior Walker「Shotgun」

4.Isley Brothers「This Old Heart of Mine」

5.Melcochita y Su Conjunto 「Cobardia」

6.The Game feat. Ditty「Standing on Ferraris」

7.Nicki Ninaj feat. Cam’Ron & Rick Ross「I Am Your Leader」

8.Migos「Gang Gang」

9.MAST feat. Chris Speed「Well You Neednt」

10.Janelle Monáe feat. Brian Wilson 「Dirty Computer」

11.Jacob Colier 「Everlasting Motion」

12.DCPRG「構造1」

13.Snarky Puppy「Tio Macao」

14.Kate Bush「The Dreaming」

15.Romano, Scravis, Texier「Vol」

16.Captain Beefheart「Moonlight on Vermont」

17.Ornette Coleman「Theme from A Symphony」

18.The Impressions「I’m So Proud」

 

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第8回目についての変更のお知らせです。

vol.8の内容は、昨今の東京都での感染者の急増に伴い、変更させていただきます。

 

ひたすらDJタイムです。

 

内容は事前に何も決めません。

 

現在、世界中で音楽が危機的な状況ですので、タルコフスキーノスタルジア』の主人公ではありませんが、「ロウソクの灯」を2時間半、ひたすら灯したいと思います。

 

亡くなった方々への鎮魂にもなるとよいのですが。

 

よって、料金もドリンクとおやつのみです。

 

持ち込み可もそのままですよ。

 

おしゃべりしながらでも結構です。

 

無理なくご参加ください。

 

ウィルス対策は前回と同様に継続いたしますが、マスクはもう用意できませんので、ご了承ください。

 

第8回目の内容は6/6に行いますので、宜しくお願いいたします。

 

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夜学バーbratまでの道順の解説です!

えー、夜学バーbratの場所がわかりづらい。という意見をいただきました(笑)。

 

実は私も最初はちょっと見つけにくかったです。

 

飲屋街にありまして、ビルが比較的密集してます。

 

そこに入り込むと番地もよくわかりませんし、意外とのっぺらぼうなので、わかりにくいですね。

 

私もこれでたどり着くのに時間かかってしまいました。

 

ですので、JR御徒町駅から着実に到着できる安全ルートを写真付きでご案内します!

 

①JR御徒町駅北口を出ます。

 

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②「地下鉄上野広小路駅」に進みます。左折ですね。

 

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③春日通りをしばらく直進します。

中央通りとの交差点も超えます。

道路は右側の歩道を歩いてください。

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④右手に寄せを見ながら直進です!

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⑤この奥にビビンバ屋さんが見えてきますので、右折します。

 

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⑥右折すると業務スーパーが見えます。

 

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⑦直進して、「永谷」と見えるのが(夜学バーbratの入っているビルです!

 

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4/4、お待ちしております!

 

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ジェラルド・ウィルソンのすばらしき世界!

Gerald Wilson『New York, New Sound』(Mack Avenue)

 


Personnel;

Clark Terry(flh, tp 2,6),

Jon Faddis(tp 1,2,5,6,8,9 &10),

Frank Greene(tp 3,4 & 7),

Jimmy Owens, Eddie Henderson,

Sean Jones(tp),

Benny Powell, Luis Bonilla,

Dennis Wilson, Douglas Purviance(tb),

Jesse Davis(as), Jerry Dodgion(as, fl),

Jimmy Heath(ts), Frank Wess(ts, fl),

Jay Branford(bs),

Kenny Barron(p 1,2,5,6,8,9 & 10),

Renee Rosnes(p 3,4 & 7),

Anthony Wilson(g),

Oscar Castro-Neves(g 8),

Larry Ridley(b 1,4,6,8 & 10),

Trey Henry(b 5, 7 & 9),

Bob Cranshaw(2,3 & 6),

Lewis Nash(drms 1,5,6,8,9 & 10),

Stix Hooper(drms 2,3,4 & 7),

Lenny Castro(perc 4 & 8)


Gerald Wilson(arr, cond)

 

Recorded at Clinton Recording Studios, New York, NY in February 2003

 

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プロフェッサーと呼ぶにふさわしい風貌の

ジェラルド・ウィルソンは1940年代から、亡くなる2013年までの長期にわたって、主にビックバンドのリーダー、トランペッター、アレンジャー、コンポーザーとして活躍(エリントン、ベイシーのアレンジも行った事があります)、教育活動にもとても熱心なジャズメンでしたが、日米での評価はかなり開きのある人のような気がします。

 

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大作志向のカマシ・ワシントンは、ジェラルド・ウィルソンの生徒でした。

 


西海岸を中心にほぼ、ビックバンドを中心とした活動を生涯にわたって行なっていたというキャリアは、とかく、スモールコンボを中心に聴いてきた日本のジャズファンは彼の活動を敬遠しがちですが、実は現在のジャズは大編成のものがとても多く、マリア・シュナイダーや狭間美帆のようなコンポーザー/コンダクターは言うまでもなく、超絶技巧集団のスナーキー・パピーやマルチ・インストゥルメンタリストのジャコブ・コリアー、日本の菊地成孔が主催するDC/PRGやぺぺ・トルメント・アスカラールなどなど、枚挙にいとまがないほど、大編成の優れたジャズのアンサンブルが多いです。


ですので、もはや、ジャズといえば、スモール・コンボでというのは、むしろ、現在ではオールド・スクールな発想でありましょう。

 

時代の趨勢というものに頓着しないで、自身のサウンドを追求し続けていたジェラルド・ウィルソンは、一時期はかなり活動が停滞していたと思いますが(ビックバンドは維持するのにお金がかかります)、地道な教育活動と弟子たちが有名なジャズメンに成長していった事もあってか、2000年代になって再評価が高まり、マックアヴェニューからコンスタントにアルバムが出るようになりました。

 

本作はそのような作品の一つです。

 

参加メンバーには、往年のジャズメンの名前が結構いるのが嬉しいですね。

 

ジミー・ヒース、ボブ・クランショウ、ジョン・ファディス、ジェリー・ダジオン、そして、クラーク・テリー

 

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クラーク・テリーもまたビックバンドを率いていた事があります。

 


クラーク・テリーは1950年代に、短期間ですが、デューク・エリントンのオーケストラに在籍しておりました。


1918年生まれのジェラルド・ウィルソンは録音当時、85歳の高齢ですが、ビックバンドはむしろ若々しく、演奏にはどこにも力みがなく、常に余裕を持って楽器が鳴っています。


特に新しい事はしていないし、びっくりするような所はないんですけども、塩梅の絶妙さがやはり長年ビックバンドやっている人の年季としか言いようがないんですが、オーケストラの音一つひとつがホントに自然に染み渡るんですよね。

 

個人的には、「Blues for The Count」の後半のアンサンブルの気持ちよさが絶品ですね。

 

また、派手さはありませんが、「Equinox」のレネイ・ロスネスのソロが素晴らしいですし、ギターソロをフィーチャーした「Teri」の都会の哀愁が見事です。


こういう芸当はやはり、若い人にはできない、ベテランならではのものであって、長年の経験の蓄積からしか、サウンドというものは出来ないという事がよく分かります。


クラシックでも名指揮者と呼ばれる人々のいい仕事はある程度の年齢を過ぎてからがほとんどです。


早熟の天才たちの熾烈な技の競い合いがかつてのジャズでしたけども、それとは相反する事を積み上げてきた事が現在のジャズのアンサンブル重視、サウンド志向を貫いたジェラルド・ウィルソンの晩年の境地を是非お楽しみください。

 

 

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