わ宮崎駿『未来少年コナン』
彼の作品は大変多いですが、私は未だにこの作品が彼の最高傑作だと思っています。
2008年8月に、超磁力兵器(それが何なのかはよくわかりませんが)によって、ほとんどの人類が死んでしまい、大陸はすべて水没してしまってから20年経った世界、すなわち、2028年が本作の舞台です。
禍々しいオープニング。なのに、OP曲は底抜けに明るい。
のこされ島に不時着してしまった人々。おじいが若い。
主人公のコナンは、この「大変動」で、宇宙に脱出しようと試みていた人々の生き残りの子供で、唯一の生存者となってしまったおじいと一緒に「のこされ島」に2人で暮らしていました。
コナンは物心ついた時には、すでに両親も亡くなっており、おじい以外の人間を一切知らずに生きてきたんですね。
この島に、ラナ。という少女が漂着した事から物語が動き始めます。
コナンが初めて見た女の子がラナでした。
このラナはインダストリアという勢力から逃れてきたところ、のこされ島に偶然漂着したという事なのですが、この少女は、太陽エネルギーの開発者である、ブライアック・ラオ博士の孫であり、行方不明になった博士の居所を突き止めるために、インダストリアが追い回しているわけです。
なかなか当たらないインダストリアの銃弾(笑)。それをギャグにしているシーンがあります。
ラオ博士は、インダストリアが太陽エネルギーを悪用する事を恐れて、行方をくらませているんですね。
コレが太陽エネルギーを供給する人口衛星。
ラオ博士はもともとはこんな風貌でした。
本作の最初は、このラナをいかにして救出するのか?という事が主眼となりまして、インダストリアとその手下となっているダイス船長、行政局次長のモンスリー、そして、行政局長レプカたちと、コナン、ラナ、途中から仲間になったジムシーたちとのインダストリアでの追いかけっこが面白いです。
足で真剣白刃取り(笑)!
コナン必殺足指つかまり!
ラナを抱えたまま、コナンがとんでもない高さから飛び降りるシーンは、爆笑モノ!
コナンの人間離れした身体能力、ダイスがコロコロと都合よく立場を変えるいい加減さがもう無上までに痛快です!
この頃のアクションの描き方は、もう天衣無縫としかし言いようがないですね。
しかし、その合間に、おじいの死、ジムシーとの友情、「パッチさん」との出会いという、ただの野生児であったコナンが人間的に成長していく過程をシッカリと描いているからこその深みがありますよね。
男の子同士の力くらべ!こうやって友達を作っていくものなんですね。
男の子同士の友情の清々しさ。
パッチとの出会いもまた前半の重要なシーンです。
パッチさん。
おじいの死を悲しむコナンが獣のように泣き叫んで暴れまわるという表現にしたのは、見事ですね。
野獣のようになるコナン。敢えて作画を悪くするというのが素晴らしいですね。
コレに続くハイハーバー編は、これまでのバスター・キートン的な面白さだけでなく、登場人物が一挙に増えるので、とても話しが重層的になってきているのが面白いですね。
このウマソ感!
村の中に複雑な構造があって、村長たちが住んでいる「本村」に対して、牧畜を中心とする人々が山の向こうに住んでおり、農耕を中心とする「本村」との間に交換経済関係が成立しているのですが、この牧畜をする人々の一部が山賊化して、両者の交流を難しくしているなど(ここにコナンたちも巻き込まれるのですね)、コナンは、ここで社会とか経済というものを直に学んでいるわけです。
宮崎駿、大塚康生のタッチなので、コミカルでユーモラスにはなりますが、よく考えてみると、『マッドマックス』『七人の侍』ではあります(笑)。
ジムシーもウマソーという子豚を育て始める。
ハイハーバーのヤング・サグ、オーロとその妹、テラ。
やがて、ハイハーバーには、ラナを再び奪回すべく、モンスリー次長がかなりの兵力でインダストリアを占領してしまいますが、コレが最後に大津波でひっくり返るというのは、見事な展開だと思いました。
このハイハーバー編は、全編の中でも白眉と言って良いのではないでしょうか。
そして、クライマックスである、ラオ博士とインダストリアの人々を救うために再びインダストリアにはコナンたちが乗り込むインダストリア編その2は、なんと言っても、ギガントとコナン、ジムシー、ダイスの戦いですね。
とにかく、ダイスとコナンが暴れ回ると面白くなります(笑)。
シリアスな戦いのはずなのだが、この三人衆が暴れるので面白ショットの連続なのでした(笑)!
宮崎駿作品に出てくる、本性がトコトン下衆なラスボスの元祖であるレプカがアホアホな3人にいいいようにボコられていく様は、何度見ても気持ちいいですな!
ギガント!超巨大な飛行艇!!世界を滅亡に追いやった兵器です!!!
個人的には、大変動の時に辛い経験をしたモンスリーが、ハイハーバーの人たちの生き方に共感して変わっていく過程が、口グセである「バカねえ!」がだんだん優しい口調になっていくという事で表現した演出が素晴らしいなあと思いました。
モンスリーが可愛くなっていくというのは、1つのテーマですね。
ムクというわんこを飼っていた、優しい女の子でした。
モンスリーはラストにはこんなにかわゆくなってしまいます!バカねえ!
さて、名シーンだらけの超がつく名作ですから、どんだけ全盛期の宮崎駿と大塚康生の黄金コンビが凄かったのかは、実際に見ていただいた方が良いでしょう!
動物が無類に可愛いのも、宮崎作品の特徴です。