デイヴィッド・リンチ+マーク・フロスト『ツインピークス』
第2部「ブラック・ロッジ」
いきなり停職処分となるクーパー。
リンチファンでしたら、この第29話までの第2部の方が本来の彼の持ち味である事がわかるのですが、一般的なテレビ視聴者には、散漫なお話に見えてしまったのでしょう、話数の中途半端さを見てお分かりの通り、打ち切りで終わってしまいました。
伝え聞くところによると、The Returneは、あの打ち切った所から話しがチャンとつながって、25年後のツインピークスを描いているらしいですね。
もう、楽しみで仕方がないです(笑)。
第2部の大半で、クーパーは冤罪で、FBI特別捜査官を停職となっていて、ツインピークスの保安官助手となっており、あの黒いスーツ姿ではなくなります。
原因は、あの「片目のジャック」でのオードリー救出なのですが、詳しくは本編をご覧ください。
保安官助手としてクーパーは活動します。
前半に活躍するのは、何と言ってもデニースです。なんと、デイヴィッド・ドゥカプニーですよ。
いろんなエピソードが次から次へと出現してくるので、やや散漫な印象が残りますけども(リンチとフロストがあまり監督していないのも大きいでしょう)、やはり、第2部最大のテーマは、「ブラックロッジ」です。
第1部ではそれほど重要ではなかった、ボビーのお父さんで空軍少佐のガーランド・ブリッグズが俄然重要人物になってきて、お話がかなり『Xファイル』に近づいていきます。
クーパーと釣りに行っていたら、突然失踪してしまった少佐。
本編ではあまり明らかにしていませんが(軍事上の機密なので)、ブリッグズ少佐が永年関わっている任務が実は地球外生物任務がついての調査でして(笑)、コレと、ツインピークスという町がとても関係があるんですね。
なので、ド田舎町に1人だけ軍服を着ているという、異様な出で立ちの理由が第1部でもチラッとは出てくるんですけども(リンチだから、ある種のコスプレキャラなのかな?と初めは思いましたが)、それがようやく明らかになるんです。
コレがなんなのかは見てのお楽しみ。
しかも、コレとクーパー捜査官の元上司であった、狂人のウィンダム・アールが関わっていた事も明らかになりました。
こうやって書いていくと、さも、スリリングな展開があるように見えますけども、実際に見てみると途中にムダなエピソードがゴマンと挿入されてくるので、相変わらず展開はものすごくゆっくり進みます。
なぜか南北戦争にトリップしてしまう、ベン(笑)。
30年近くツインピークスの町長のドゥウェイン(笑)。またしてもおじいちゃんフェチが爆発。
ココがハリウッド映画の文法に慣れきったアメリカ国民をイライラさせたのでしょう(笑)。
第1部と比べて、いろんなエピソードの出来が正直今一つでした。
その中でも1番盛り上がるはずであった、ジョシー・パッカードとトーマス・エカートとの確執が1番よくなかったと思います。
コレは、多分にリンチとフロストに原因がある気がしますが。
あと、ウィンダム・アールですよね。
どう見てもクーパーの方がマッドネスが上でした。
第1部のローラ・パーマーを殺したのは、悪霊の「ボブ」であり彼は最後に逃げてしまいますけども、第2部の最大の敵は、どんなにすごい能力があるとは言え、人間なんですよね。
悪霊と人間では、どう頑張っても悪霊のほうがお話し的には強いに決まってます。
アールがクーパーたちにいろいろと仕掛けてきますけども、人間には理解不能な存在である「ボブ」と比べて、いろいろと変装したり、リオ・ジョンソンを奴隷にしたりするアールはなんだか、せせこましく見えてしまいます。
この合間に「怪力高校生ネイディーン」のエピソードなどが挟まってしまうので(笑)、余計に散漫な印象となってしまって、ただの小狡い悪党みたいに見えるのが、残念でなりません。
怪力高校生ネイディーン。一応解決します(笑)。
せめて、デニス・ホパーが『ブルーベルベット』で演じた病的なフランク・ブース並みにクレイジーだともうちょっとよかったかもしれません。
とはいえ、後半のブラックロッジの謎に入ると、俄然面白さが高まってきます。
ブラックロッジの入り口。ブリッグズ少佐が失踪した場所と同じなのだ!
そことミス・ツインピークスのコンテストと絡めようという発想には、ある意味脱帽です(笑)。
コレは絶対にやりたかったんでしょうね(笑)。
こんなチープネスと核心部分が絡んでくるというのは、さすがという他ありません。
最終回のリンチ演出は、やはり脱帽せざるを得ません。
結局、ブラックロッジについての謎はあまり解明されないまま打ち切り。という形で本作は途中で放棄されたままになっていたわけですが、それがなぜか2017年になって突如として復活しました(笑)。
ココが悪の根源。というのがスゴイ(笑)。
当時、完全に忘れられた歌手であったジミー・スコットが、突然このブラックロッジのシーンで熱唱!
全編をリンチがみずから監督するという力の入れようからして、彼の総決算的な作品となることは間違いないでしょう。
楽しみです。
25年後にお会いしましょう。