Blue Note All-Stars『Our Piont of View』(Blue Note)
personnel;
Marcus Strickland(ts),
Ambrose Akinmusire(tp),
Lionel Loueke(g,vo),
Robert Glasper(p,el-p),
Derrick Hodge(b,el-b),
Kendrick Scott(drms)
Wayne Shorter(ss),
Herbie Hancock(p),
recorded at CapitolStudios,Hollywood,CA
本作のプロデューサーはグラスパーとこのドン・ウォズです。ウォズは現在のブルーノートの社長であり、ミュージシャンでもあります。
タイトル通りの、現在のブルーノートの腕っこきばかりを集めて作られた作品であり、CD二枚組みで90分を超える大作です。
ゲストとして、モダンジャズの現人神である、ウェイン・ショーターとハービー・ハンコックがDisc2の「Masquelero」のみゲストとして参加しており、Disc1の「Henya」は、アンブローズ・アキンムシーレとデリック・ホッジのみの演奏となり、トランペットとベイスの多重録音による作品となってます。
たったの一曲ではありますが、ショーター、ハンコックという現人神が参加している事からわかるように、ブルーノートというよりも、むしろ、全体の基調になっているのは、1960年代のマイルス・クインテットです。
ハービー・ハンコック陛下!
まあ、ショーターとハンコックは、1960年代にクインテットに所属しながらも、ブルーノートでリーダー作を出していたので、60年代マイルスとブルーノートは全く無関係ではないんですけども、この2つは微妙に違いますね。
ブルーノートでのハンコックやショーターはよりカッチリと作りこんでいますが、このメンバーでライヴをしているわけではなく(マイルス・クインテットが忙しく過ぎましたし)、アルバムのみの出来事なのですが、マイルスはライヴでの大暴れとラボラトリーとしてのアルバムのような二面性をもってますね。
で、本作のDisc1は、60年代マイルスをベイスとするスタジオのみの存在、即ち、新主流派的な世界ですが、およそ18分に及ぶ最長の演奏となる、「Witch Hunt」はモロに60年代のマイルス・クインテットですね。
しかしながら、単に60年代マイルスをなぞるような、懐古趣味を狙っているのではなく、ベナン出身のギタリスト、リオネル・ルエケが入っているのがやはりミソですね。
現役最高峰のギタリストの1人、リオネル・ルエケ。
彼の独特のクワーン、キューンと鳴る不思議な浮遊感のあるギターサウンドが加わると、味わいが明らかに変わってきますね。
そして、デリック・ホッジ作曲の「Second Light」で彼らのホンネである、ソウルとジャズの融合が垣間見れますね。
グラスパーの相棒でもあり、リーダー作もある、デリック・ホッジ。
しかし、彼らの本領がより発揮されているのは、Disc2でしょう。
ショーター作曲「マスカレロ」(マイルスのアルバム『ソーサラー』に収録されています)にショーター、ハンコックが降臨しますが、俄然演奏の緊迫感が違いますね。
スティーヴ・コールマンのサイドメンがこんなにメジャーになるとは思いもよらなかった、アンブローズ・アキンムシーレ。バリバリに吹きまくってます!
いざ、テナーに専念すると、彼のルーツがジョー・ヘンダーソンである事がよくわかる、マーカス・ストリックランド。
ドシン!と重い一打を繰り出す、ケンドリク・スコット。様々なバンドに引っ張りだこです。
単に60年代のマイルスの再演ではなく(そもそも、ハンコックとショーターがそういう事を一切してません)、あくまでも現代のサウンドとして演奏しているのが素晴らしいですね。
コレが「伝統の継承」なのだと思います。
コレに続くデリック・ホッジとリオネル・ルエケの曲はもはやブルーノートの伝統とかマイルスを表面的にもなぞる事など全く御構いなし。
リオネル・ルエケが大活躍しております。
ロバート・グラスパー以降のジャズにはちょっとついていけないなあ。という方には、まずはこのアルバム辺りから聴いてみて、このアルバムに参加しているジャズメンのリーダー作なり、サイドメンとして参加しているアルバムなどを聴いてみるのがよいでしょうね。
その辺は昔ながらのジャズの聴き方でよいのだと思います。
リーダー作ではあまりソロを取らないグラスパーのソロがここではタップリと聴く事ができ、そして、やはりというべきか、素晴らしいものです。
近年のリーダー作は少しチャラい気がしますが、ここでのグラスパーはガチでジャズしてます。
派手な事はそれほどしてませんけども、バッキングによってコンボの方向性を的確に示していくところなどやはりさすがと言わざるを得ません。
なお、本作は、ブルーノートの再建に尽力した、ブルース・ランドヴァルに捧げられております。
いっぺんに全部聴くのはさすがにシンドイですから、今日はDisc1を聴く!という聴き方の方がよいでしょうね。