mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

アルバート・アイラーの澄み切ったサックス!

 Albert Ayler"Live on The Riviera"(ESP)

 

Albert Ayler(ts, ss, vo, musette),

Steven Tintweiss(b),

Allen Blairman(drms),

Mary Maria(vo, ss)

 


recorded July 25, 1970 at The Maeght Foundation in Saint Paul de Vence

 

 

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アルバート・アイラーが亡くなってだいぶ経ってからESPから思い出したように発売された、1970年7月25日のライヴ(注・2021年に刊行された、細田嗣編『五十年後のアルバート・アイラー』によると、1990年代に一度別なレーベルから出ていたようです)。


「マグー財団の夜」として発売されたものと同じ会場でのライヴですけども、ピアノが抜けてます。

 

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現在入手できる、「マグー財団の夜」。サン・ラーもここでライブを行っています。

 


どうやら、ピアノのコール・コブスの現地入りが遅れてしまい、ここではピアノなしになっています。


コブスが合流した演奏は、『マグー財団の夜』として、現在は1枚のCDとなって発売されています。


コレは、その2日前の演奏です。


まずなんと言っても、観客の数がすごい(笑)。


しかも、拍手の仕方がクラシックのコンサートですね。


とてもフリージャズのライヴとは思えない。


アイラーは、アメリカでは完全に異端児扱いされてましたが、ヨーロッパでは大英雄だったんですね。


この落差に生涯アイラーは悩んでいたようです。


アイラーはテナー、ソプラノを駆使してトコトン自分の歌を歌いまくります。


時にどこに行くんだかわからないような不思議な魅力の歌まで歌い始めます。


ほぼ、アイラーの独壇場であり、共演者は彼の忠実な下僕ですね。


どうしても、アイラーのようなスタイルは、いかにサックスを吹きながらトランス状態にまで至るのか。が問題ですから、それをシッカリ周りが支えないと、めちゃくちゃになってしまいます。


なので、あくまでも御大をスターにして、周りはシッカリとサポートするという関係になっています。


よって、思ったほどドシャメシャな展開がないので、そういう意味では、すっぽ抜けを感じるかもしれません。


しかも、アイラーは全体的には、メロディを吹いている事が多く、コレもフリーにある固定観念を持っているとアレレという事になる。


何しろ、ヴォーカルまで参加してますからね。


しかし、以前にも書きましたが、アイラーはもともとサックスは抜群にうまい。


ところが、そこに留まらず、トランスしてほとんど音程などおかないなしのノイズに至ってしまう所が彼のユニークさなのですが、ここでは、サックスの音はとても澄み切っていて、何というか、音楽として成熟を感じます。


アイラーはその実力に見合った共演者を余り得られる事が出来ず、才能を十全に発揮できた録音を余り残していないのだとおもいますが、本作は、ピアノがいない分、アイラーの美しいサックスを堪能する事が出来るので、やはり、『マグー財団の夜』とともに持っていたいものです。


『マグー財団の夜』は、アイラー畢生の名演、「音楽は宇宙を癒す力である」を聴けます。


本作では、アイラーの代表曲といってよい、「Ghosts」の名演が聴けます。


コレでアイラーのサックスの音色が気に入ったら、『スピリチュアル・ユニティ』や『ベルズ』といった、ESPから出たハードコアな演奏を聴くとイイかもしれません。

 

  ※               ※                  ※


1970年11月25日に、アイラーは、ニューヨークのイーストリヴァーで水死体で発見されました。


他殺説もありましたが、後年の証言では自殺である説が濃厚です。

 

 

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