Réne Thomas, Jacques Pelzer『TPL(Thomas Pelzer Ltd)』(Vogel)
personnel;
Jacques Pelzer(as, fl,ss),
Réne Thomas(g),
Rein de Graaff(p),
Henk Haverhoek(b),
Jean Linzman(el-b), only B1
Han Benink(drms)
recorded at Reward Studios, Schelle, February 26, 1974
ベルギー出身の、どちらかというとB級なジャズメンの2人、ルネ・トーマとジャック・ペルゼルの双頭クインテット(B面1曲目はピアノが抜けてカルテット、2曲目は、サックス、ギター、ベイスの変則トリオ演奏です)の隠れた名作です。
まずもって特筆すべきは、ルネ・トーマのアメリカ人顔負けのガッツのあるギターですね。
ジャケット裏に写っている、ルネ・トーマ。
ジャズギターは、彼の世代までは単にアンプで音を増幅しただけのクリアなトーンのエレキギターを弾いてますので、ロックギターみたいな歪みなどは全くないので、そういう意味でのガッツはありませんが、トーマの弦を弾く力の凄さがモロに伝わってくるような凄さなんですよ。
まあ、とても地味な世界ではあるのですのが、コレは、いろんなジャズギターと聴き比べてみると一聴瞭然でして、一音一音がものすごくクッキリとしていて、大きいです。
アメリカの本場でもコレだけの音が出ているバップギター弾ける人ってそうはいないと思いますね。
そんなに小技が効いている感じではなく、むしろ、ぶっきらぼうな弾き方なんですけども、そこも含めてすごく魅力的なんですよね。
外国人が本場の人よりも本場っぽい事って時折ありますけども、トーマのギターの音にはそういう力強さがあります。
そして、同じベルギーのジャック・ペルゼルのアルトですよ。
死神チェット・ベイカーと共演するジャック・ペルゼル。
この人は何か技術的に問題があるのか、音程が不安定で、トーンがアンマリ長続きしないような吹き方なんですよ。
あと、せっつくような独特のフレージング。
現在のサキソフォンの吹き方から考えたら相当に問題があると思いますけども、そこがなんともたまらないんです。
技術的な稚拙さが、彼独特の魅力になっているんです。
というか、それが表現になっているんですね。
フルートは比較的普通に吹いているんですけど(フルートはちゃんとした技術で吹かないとそもそも音が鳴りませんので)、アルトのどこかアナーキーな魅力は、ジャッキー・マクリーンとかティナ・ブルックスのようなB級バップの味わいがあり、好きになるとトコトンじゃぶりつきたくなる旨味があります。
ドラムに、ICPオーケストラのドラマーとして、大変有名なハン・ベニンクがいるのも面白いですね。
ココでは、先輩たちを立てて、普通のジャズドラマーに徹しています。
モダンジャズは信じがたいほどの超人、天才がゴロゴロいたわけですけども、ここでのトーマやペルゼルのような、決して、華々しい脚光を浴びたわけではないのですけども、ディープなジャズファンには決して忘れる事のできない味わいで勝負していた無数のジャズメンがおりまして、こういうミュージシャンが好きになってしまうと、ジャズからはなかなか離れられなくなってしまいますね。
残念ながら、レコードはベルギーのマイナーレーベルから出たっきりで再発された形跡はなく、CD化もされていません。
オリジナル盤を丹念に探すしか、聴く術が今のところないのが実情です。。
このレコードを持っているジャズ喫茶へ行ってみるのもいいかもしれません。
アメリカのジャズをある程度探求し尽くした人には、是非オススメいたします。
ルネ・トーマは仕事先のバルセロナで心臓発作のため、急死してしまい、コレは彼の最晩年の録音となりました。