mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

クリス・デイヴが普通のジャズドラマーをしていたアルバムは今となっては貴重です!

Kenny Garrett 『Standard of Language』

 


Personnnel:

Kenny Garrett(as,ss),

Vernell Brown,jr.(p),

Charnette Moffett(b),

Chris Dave or

Eric Harland(drms)

 

recorded at Avatar Studios, NY and Oceanside Studios, LA


本作の目玉は、今をときめくクリス・デイヴを、ケニー・ギャレットが起用していた。という事になってしまうのだけども、そういえば、今や、ジャズドラマーとしてトップクラスであるブライアン・ブレイドを起用していたのもケニーでした。

 

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マーク・ジュリアナと双璧をなす、現役最高のドラマーの1人、クリス・デイヴ。なんと、宇多田ヒカルのアルバムにも参加しています!

 

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ブライアン・ブレイドが参加した1995年の『Triology』。この辺りからギャレットは大化けし始めました。

 

 

そう考えると、ケニー・ギャレットはなかなかいいドラマーを見つける能力が高い人ですよね。


クリス・デイヴを目当てに聴く。というのは、ケニーにはちょっと申し訳ない気もしますが、とはいえ、現在のクリスのあのユニークなスタイルではなくて、かなりオーソドックスな、しかし、凡百なドラマーには到底できない芸当が聴ける、今となってはかなり貴重なアルバムですね。


同じ頃のマクスウェルのアルバムでは、もうちょっと自分のスタイルを出してますけども、そこはリーダーである、ケニーの方針に合わせているのでしょう。


その卓越したドラムにうまく煽られて、ケニーのアルトが実に気持ちよい。


こういうオーソドックスなスタイルでアルトを吹かせたら、やはり世界でも最高水準と言ってよいでしょうね。


一曲目に大スタンダードである「What is This Thing Called Love」を持ってくる大胆さ。


猛然と吹いて吹いて吹きまくり、バップをなぞろうだとというスタイルは一切見せないところに、ケニーのジャズ根性というものを見ました。

 

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マイルスに「ソロが長い!」とステージでケリを入れられていたのも今は昔。ホントに素晴らしいアルト奏者になりました。若い頃は、エリントン・オーケストラにも在籍していました。

 


まだ、スタンダードでもこういう面白い演奏が出来るもんなんですね。


後は全てケニーのオリジナルで、「Kurita Sensei」「Dr.Tone’s Short Speech」「Gendai」という何やら意味深なタイトルの曲もありますが(ケニーは日本語がかなり堪能だったと記憶します)、私がイイなと思ったのは、「Just a Second to Catch a Breath」。


こういう何でもないようなスローテンポの曲をダレずに聴かせる力が彼にもついてきたんですね。という事がよくわかります。

 

もうすっかり巨匠なんですなあ。


最後のタイトル曲は、Aテーマ1回、Bテーマ2回での演奏を連続で行うという、ちょっと変わった曲。


だんだんBPMが上がっていって最後にフリーがかって終わるというもので、整合性の取れた正気のコルトレインと言った趣き。


ちなみに、この曲だけドラムがエリック・ハーランドになりますけども、彼もまた今をときめくドラマーですよね。

 

優れたドラマーに煽られてこそ、ホーン奏者は気持ちよく吹けるという事がわかる、典型的な好アルバムですね。

 

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