Chick Corea『A.R.C.』(ECM)
personnel;
Chick Corea(p),
Dave Holland(b),
recorded at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, Baden-Württenberg,
West Germany in January 11, 12 and 13, 1971
チック・コリアのジャズシーンの登場は実に鮮烈でした。
ブルー・ミチェル、スタン・ゲッツ、マイルス・デイヴィスなどのサイドメンをつとめつつ、やがてリーダーとして独立し、1972年に発売された『Return to Forever』は、ジャズというジャンルとしては異例なほど売れ、結果としてフュージョンというジャンルを生むきっかけとなったかと思えば、「サークル」という、フリージャズのグループを結成したりと、活動の当初からその活動の幅が広い人だったんです。
なので、ある程度、いろんな傾向のアルバムを聴いてみる必然があると思うのですけども、本作はチックの最もハードな側面が反映したアルバムの代表作といってよく、このような作風は、その後はあまり彼の作品には見られなくなるので、その今でも彼の作風を知る上でも実は貴重な一枚と言えるかもしれません。
このピアノトリオ、よくよく見なくても、「サークル」のリズムセクションなんですよね。
サークルはこのトリオにアンソニー・ブラクストンを加えた編成なのですが、本作の方がより表現としての完成度が高いものとなっています。
フリージャズ寸前になりながらも、実はものすごい構成力があり、3人の演奏に一切のムダがありません。
誰かがソロを取っているという感じではなく、全員が濃密なアンサンブルを作り上げているような演奏であり、かなり緻密な演奏です。
アルバート・アイラー『Spuritual Unity』の演奏ともちょっと似ている気がしますが、アイラーのトリオの演奏は、テーマ→アドリブ→テーマをチキンと守っている演奏ですけども、このアルバムはその境界がどの曲も曖昧で、曲なのか、アドリブなのか、アンサンブルなのかが、溶けてしまっている演奏ですね。
厳密にいえば、ソロ回しはやっているのですが、それがものすごく有機的に結びついていて、必然的なんですよね。
フリーなようでいて、驚くほど精密に作られている音楽であるのですが、しかし、その息苦しさを感じさせない。
こういうジャズはあるようでなかったと思います。
それにしてもホンの少し前まで、Facebookに演奏をライブ配信するほど元気というか、演奏も全く衰えが見られないまま突然亡くなってしまった事は実に残念でなりませんね。。
今聴いてもとてつもないジャズですので、是非とも。