mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

ハンコックのアタマの中に渦巻くマッドネスが爆発した怪作!

Herbie Hancock 『Sextant』(columbia)

 

personnel;

Bennie Maupin(ss, bcl, piccolo, affiche, hum-a-zoo), Eddie Henderson(tp, flh),

Julian Priester(btb, ttb, atb, cowbell),

Herbie Hancock(p, el-p, clavinet, synth, mellontron),

Buster Williams(b, el-b),

Billy Hart(drms), Buck Clark(perc), 

Patrick Gleeson(synth)

 

recorded at Wally Heiders and Different Fur Tradings Company, San Francisco in late 1972

 

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2021年で御歳81歳で未だに現役のハンコック。モダンジャズの最後の巨人ですね。


このアルバムの後が、かの大ヒット作である、『ヘッドハンターズ』である事がにわかに信じられない怪作。


ハンコックというと、『処女航海』くらいしか知らない人に聴かせたら、同一人物のアルバムとは思えないでしょう。


それくらい、本作は凄まじいです。


最近は、ユネスコ大使にまでなってしまったハンコックですが、私は、この人の内面には、ショーターとはまた違った狂気が常に宿っていると思っていて、それが一挙にぶちまけられたのが、本作だと思います。


3曲しか収録されてませんが、どれもこれもすごい。


「Rain Dance」は、アナログシンセサイザーで作ったと思われる電子音を基調とした、いわば人力テクノなのですが、コレが冒頭という事に驚きます。


ほとんどハンコックのソロで膨大なオーバーダビンクを経て作られた曲で、彼の頭の中はすごい事になっているのがとてもよくわかります。


これに続く「Hidden Shadows」は、7+5+4+4=19拍子の変拍子ファンクという、全く踊れないもので、そんな中で狂ったようなソロを取ってるのは、やはりハンコック。


バスター・ウィリアムズのベイスが太っとくて素晴らしいですね。


要するにA面は、彼のマッドな世界をかなりダイレクトに提示したわけです。


よくこんなのコロンビア側に許されたなあ。。


B面は「Hornets」は一大ファンク大作で、ようやくバンドのメンバーが暴れ回り、ハンコックは更に暴れ回ります。


この時代に関して、近年出た自伝を読むと「絶好調だった」みたいな事が書いてあって、多分、それはハンコック1人がぶっ飛んでいただけかもしれないのかなと。

 

まあ、相当おクスリやってたようなのですが(笑)。


しかし、この後に世紀の大ヒット作『ヘッドハンターズ』を作ってしまうハンコックは、まことに謎です。


意外と聴かれていない作品かと思いますので、是非とも。

 

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