Mel Tormé and Friends『Recorded Live at Marty’s, New York City』(Finesse)
Personnel;
Mel Tormé(vo),
Mike Renzie (p),
Rufus Reid or Jay Leonhart(b),
Donny Osborn(drms)
guests;
Janis Ian(vo),
Cy Coleman(vo),
Jonathan Schwartz(vo),
Gerry Mulligan(bs)
recorded at Marty’s, New York in June and August, 1981
晩年近くまで現役だった、メル・トーメ。
ジャズファンの中でも、男性ヴォーカルを聴いている人というのは、正直少ないでしょう。
かくいう私もそんなに持ってないんですが(笑)、そんな私でも何枚かは持っているのがメル・トーメです。
本作はメル・トーメの実力が遺憾なく発揮された、ライヴアルバムの傑作です。
マイクがハウったり、トーメの声が割れてしまったりと、録音が決してよいものとは言えませんが、そのほとんど手を加えていないが故の生々しさがそのまんま入っていて、ものすごく臨場感が伝わってきます。
トーメが歌詞を変えて、笑いを取るところがあって、観客の笑い声が思い切り入ってたりもします。
ただ、トーメがいつものようにライヴで歌うのを記録したら、それがとてつもない名盤であった。というのが、彼の歌い手としてのホントの凄さを思わざるを得ません。
若い頃から抜群であったセンス満点のスイング感は衰えるどころかますます磨きがかかり、興に乗ったスキャットが演奏全体を引っ張り回る様は見事という他ありませんね。
LP2枚組にわたる本作は面ごとに趣向が凝らされ、ジャニス・イアンと言った、意外なゲストも参加し、決して飽きさせることのない作りになっているのも嬉しいです。
ジャニス・イアンをゲストに迎え、彼女の曲をデュエットで歌います。
ジェリー・マリガンは、若い頃から古いものと新しいものを結びつける事に能力を発揮する人でした。
曲もビリー・ジョエル、ジャニス・イアン、アントニオ・カルロス・ジョビンを取り上げたりしてますね。
1980年代のメル・トーメなんて、正直、過去の人扱いだったと思いますけども、実はジャズシンガーとしては若い頃よりも遥かに深みが出ていて、人気というものを左右される事なく精進し続けていた事がハッキリとわかります。
この作品によって、トーメの再評価が高まったのか、アルバムが晩年に至るまでコンスタントに出るようになり、その至芸の数々を現在も聴くことができます。
オンデマンドのCD-Rやダウンロードでしか購入できないのが、なんともですが、意外と中古のLPが比較的安価に入手できるので、丹念に探してみるのも良いかと思います。