mclean-chanceの「Love Cry」

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カーリー・サイモンのライフワークの第1作!

Carly Simon『Torch』(Werner Bros.)


Personnel;

Wikipediaにあるので各人調べるように(笑)


recorded at Power Station, New York, in 1981?

 

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若い頃はジェイムズ・テイラーと結婚していました。

 

カーリー・サイモンが本作を出して、結構なチャートアクションをしたというのは(ビルボードポップチャート最高50位)、ロック業界に小さくない衝撃を与えたと思います。


その証拠に、先日取り上げた、リンダ・ロンシュタットが巨匠、ネルソン・リドルと組んで3枚のアルバムを作り、こちらは更なる大ヒットとなりました。


本作はチャートアクションこそ、ロンシュタットほどではありませんが、内容的には全く甲乙つけ難い内容であり、彼女の代表作の一つと言ってもよいと思います。


ロンシュタットはネルソン・リドルの指揮、アレンジによるフルオケでしたが、こちらは、モダンジャズフュージョンのミュージシャンを多く起用し、指揮者として、ドン・セベスキー、マーティ・ペイチというコレまた凄腕を起用し、全体のプロデュースとアレンジはマイク・マイニエリが行うという、何とも贅沢な作りです。

 

ジャズのスタンダード曲を歌うというコンセプトですが、カーリー・サイモンの自作曲「From The Heart」を取り上げたり、「Blue of Blue」、「What Shall Do with The Child」の歌詞の補作を行うなどしており、そこに既に自己主張があります。


また、ホーギー・カーマイケルや、デューク・エリントン、リチャード・ロージャス&ローレンツ・ハートのような、まさに大スタンダード曲の中にランディ・ウェストンの曲を入れたり、スティーヴン・ソンドハイムの当時の新作「Not A Day Goes By」を取り上げたりと、かなり選曲も大胆です。


リンダ・ロンシュタットの三部作はヴォーカリスとして作り上げたアルバムですが、こちらはよりアーティスティックに作られているのが特徴で、なによりもソリストデイヴィッド・サンボーンフィル・ウッズ、ブレッカー兄弟という個性的なミュージシャンが参加しており、そこが聴きどころになっているのも楽しいです。


ダイアナ・クラールが2014年に発表した『Wallflower』は、デイヴィッド・フォスターをプロデューサーに起用し、ジム・ケルトナーやディーン・パークス、グレアム・ナッシュ、スティーヴン・スティルスをゲストに招き、なんとロックの名曲を歌うという、大変ユニークな傑作でしたが、むしろ、コレと好対照なのかもしれません。

 

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カナダ出身のダイアナ・クラールの旦那さんは、なんと、エルヴィス・コステロ

 


本作はご覧になってわかるように、超がつくハイバジェットなアルバムですけども(笑)、当のカーリー・サイモンのヴォーカルはいつもの全く肩に力の入らない、実に自然体な歌い方であり、特にジャズに挑戦している事への気合いみたいな事が感じられないのがとてもよいですね。

 

「Hurt」における、まっすぐな熱唱は、全体の白眉でしょう。

 

マイケル・ブレッカーのテナーソロも大変な熱演です。


よく考えてみると、カーリー・サイモンはニューヨーク生まれのニューヨーク育ちですから、ジャズとミュージカルは身近な存在なのであって、むしろ、これは挑戦というよりも、子どもの頃から親しんできた音楽に取り組んでいるという事なのかもしれません。


しかも、コレは単なる企画モノではなく、その後の彼女のライフワークとなりまして、1990年『My Romance』、2005年『Moonlight Serenade』とアルバムを出し続けているんですね。


ロックという音楽もまた様々な方法でルーツを掘り下げ、表現を更に深めていった結果、それが彼女にはジャズという形で結実していったのは実に面白い事だと思います。

 

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