Milt Jackson『That’s The Way It Is』(impulse!)
personnel;
Teddy Edwards(ts), Milt Jackson(vib),
Monty Alexander(p), Ray Brown(b),
Dick Berk(drms)
recorded at Shelly’s Manne-Hole, Hollywood, Carifornia, August 1 and 2, 1969
ミルト・ジャクソンといえば、MJQのメンバーとして有名ですが、並行して自身のリーダー作も出していたんですけども、コレもインパルス!から出された「シェリーズ・マンホール」でのライヴをアルバムにしたものです。
コレを聴くと、MJQでの非常に抑制されたおすましなヴァイブラフォンの演奏よりも、ミルトの持ち味はやっぱりコッチなのだな。というのがよくわかりますね。
まあ、ジャズを熱心に聴いている人には釈迦に説法みたいなものですけども、ミルトの名作『Milt Jackson Quartet』、キャノンボール・アダレイの名盤、『Things are Getting Better』などを聴いていれば、ミルトというのは、非常にソウルフルは演奏をする人である事はよく知られています。
タメの効いたミルトの演奏はできそうでできないのです!
MJQのコンセプトは事実上、ジョン・ルイスによって決められており、ミルトも納得した上での演奏ですから、あれはあれで素晴らしいものです。
しかし、本来の持ち味を抑制し続けるというのは、やはり、ストレスだったのではないかと思うんですよね。
それが、MJQを離れたこういうライヴという場所で思い切り出てしまっているんですね。
MJQは売れっ子でしたので、ミルトにとってはギャラがよかったというのは、正直あったのでしょう。
結局、1974年の解散まで、彼は在籍しました。
ヴァイブラフォンはジャズではそんなにニーズがあるわけではなく(実際、名手と言える人はホントに少ないです)、1960年代はロックの大盛況もあり、ミルトとしては、MJQから離れるのは、得策ではないと考えたのでしょう(その後、MJQは再結成され、1999年に亡くなるまで、ミルトはMJQに在籍し続けました)。
実際、それによってMJQは名盤、名演を出していたので、よかったわけですね。
そんな彼がヒマな時に臨時で編成されたクインテットと思いますが、ドラマーのシェリー・マンの経営する、「シェリーズ・マンホール」で行われたライヴは、肩の凝らない快作として大変素晴らしいものです。
ジャケット裏に載っている当時の「シェリーズ・マンホール」。
演奏の核を握るのは、「featuring 」とアルバムジャケットに書かれているだけあって、ズシンと重力感があってバンドを推進させる、レイ・ブラウンのベイスですね。
レイ・ブラウン。彼もオスカー・ピーターソンとのトリオで売れっ子でした。
彼もオスカー・ピーターソンの不動のトリオですから、ものすごく忙しかったのだと思います。
ライナーノーツを見ると、なんと、驚くべき事に、レイ・ブラウンはマネージャー業を副業としてたらしく、ミルトのマネージャーだったのだそうです(笑)。
よくそんなヒマがあるものだと。
お互いミュージシャンとして別々に行動していて、ヘタすると一方がアメリカにすらいない可能性すらあるのに、どうやってマネージメントしてたんでしょうか(笑)
結局、ブラウンが雇って別な人が事実上マネージャーだったかも知れません。
その辺が謎ですが(笑)、そんな忙しい合間を縫っての演奏という、慌ただしさはほとんど演奏からは感じることはなく、非常にリラックスした感じのいい意味でラフで普段着なライヴなのがいいですね。
テディ・エドワーズのいい湯加減のテナー、非常にハッピーなテイストのピアニストのモンティ・アレクサンダーがコレまたいいですね。
インパルスというと、どうしてもコルトレインのカラーが強いのですが、こんな当時のジャズの日常風景のようなアルバムも出ていたんですね。