mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

「アメリカン・トリオ」のライヴです!

Keith Jarrett, Charlie Haden, Paul Motian『Hamburg ‘72』(ECM)

 


Personnel;

Keith Jarrett(p, ss, fl, perc),

Charlie Haden (b),

Paul Motian(drms, perc)


recorded live at The NDR-Jazz-Workshop in Hamburg, June 14, 1972

 

 

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ハンブルグに本拠地を持つ公共放送局、NDR(Norddeutcher Rundfunk 北ドイツ放送協会)のテレビ番組、「Jazz Workshop」の1972年6月14日のスタジオライヴが。2014年にECMから発売されました。


キースのトリオというと、ギャリー・ピーコックとジャック・ディジョネットのものが有名ですが、その前に、チャーリー・ヘイデンとポール・モーシャとのトリオがありました。


1960年代末から活動が始まっているようで、アトランティックからアルバムがでているんですけども、現在ではあまり注目されていないようです。


このトリオにデューイ・レッドマンを加えたのが、いわゆる、「アメリカン・カルテット」(厳密にいうとカルテットではないですけど)なのですが、このトリオもピアノトリオとは言えないのですね。


というのも、キースはピアノ以外の楽器を演奏していることが多く、ポール・モーシャンもパーカッションの演奏も行います。

 

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よって、このトリオは、もはやピアノトリオとは言いがたく、その音楽性を考えると、むしろ、「アメリカン・トリオ」と言うのが正しく、これを拡大させたのが、「アメリカン・カルテット」と考えた方が良さそうです。


ベイスとドラムズが変わると、こんなにも音楽性が変わるのか。というくらいに、1980年代のトリオとは違立てますね。

 

「スタンダード・トリオ」ではキースはピアノに専念してますし、もはや、キース自作曲を演奏する事もほとんどなくなりました。


この「アメリカン・トリオ」のライヴはいい意味でラフで開放的であり、スタンダード・トリオ」のような濃密なアンサンブルではないです。


キースがかなり頻繁に楽器を持ち替えているので、行き当たりばったりの演奏ではなく、演奏の展開はある程度決めてはいると思いますが、先程書いたように、演奏はカチカチのキメキメではない、ルーズさがとてもいいです。


恐らく、決め手となっているのは、ポール・モーシャンの、手数の少ない、一聴、雑に聞こえる、隙間の多いドラミングであり、演奏に絶妙な余白を作っていて、演奏が決して一点に集中しないようになっているのではないかと。

 

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チャーリー・ヘイデンの地面に根っこが生えているような安定感とショベルカーで地面を掘り返すような気持ちよさのあるベイスは、このトリオに安定をもたらし、その上でキースは好きなように絵を描いていますね。

 

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個人的には、このトリオの方がスタンダード・トリオよりも面白く思います。


キースのソプラノサックスは、やはり、彼のあの唸り声の延長であり、彼の歌そのものである事がよくわかります。


コレはフルートにも言えますが、要するに、キースからは歌心が溢れて溢れて仕方がなく、それに忠実であると、ピアノの演奏だけではもう収まりがつかないのでしょう。


ピアノを弾きながら、身体を捩らせ、唸り声を上げてしまうのも、結局、同じことなのでしょうね。


ECMが録音したものではないので、演奏があのキラキラと透明な音ではなく、より実際のこのトリオの音に近いのも嬉しいですね。


もう少し、このトリオのライヴ盤を聴いてみたいです。

 

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