Horace Parlan『Happy Frame of Mind』(Blue Note)
personnel;
Johnny Coles(tp), Booker Ervin(ts),
Grant Green(g), Horace Parlan(p),
Butch Warren(b), Billy Higgins(drms)
recorded at Van Gelder Studio, Englewood Clifs, New Jersey, in February 15, 1963
本作がこのアルバムのかたちで発表されたのは、なんと、1986年。
要するに、お蔵入りのアルバムであったのだが、またしてもブルーノートの凄さを証明するとんでもないクオリティのアルバムなのでありました。
揃っているメンツの顔ぶれがもう既に素晴らしい。
中音域を丁寧に吹くことに定評のある、ジョニー・コールズに対し、フレーズの語尾がいつもモアンとする、恐らくはテクニック的には問題のある吹き方とおもわれますが、それが特有の表現にまでなっている、ブカ・アーヴィンのテナー。
ジョニー・コールズ。エリントン 、ベイシー、ギル・エヴァンズのすべてに起用されたトランペッターでもねあります。
ブカ・アーヴィン。
そこにギトギトとした味わいのグラント・グリーンのギターと、どこかぎこちなくスムーズに流れないホレス・パーランのピアノのリズムセクションがコレに絡めば、最高に真っ黒いハードバップセッションが聴こえてきますよね、ジャズファンには。
生前は芳しい評価がされなかった、グラント・グリーン。
日本人好みのピアニストである、ホレス・パーラン。
グラント・グリーンを除くこれらのメンバーが全員がミンガスのグループ出身者である事は恐らくは偶然ではなく、ココにブルーノートをある意味代表するグラント・グリーンを絡めようという、実に黒々としたジャズが好きな人たちにはたまらない内容です。
パーランといえば、『Us Three』ばかりが日本では注目されている気がしないではないですが、本作はブルーノートにおけるパーランの傑作の1つと言ってよく、ブルーノート特有のカチッとした構成とアレンジの行き届いたジャズですね。
このアルバムが出なかったのは、多くの未発表音源と同じで、アルバムを出しすぎると、レーベルが赤字になってしまうからなのでしょう。
ブルーノートは、個人事業主が経営する、零細レーベルであり、その録音のほとんどがエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオの録音なのも、自前のスタジオを所有してなかったからです(ヴァン・ゲルダー・スタジオは、様々なレーベルの録音に使われており、決してブルーノートの専属ではないです)。
発売された時のブルーノートはすでに一度大手レーベルに売却された後に、新たな社長を立てて復活したブルーノートであり、恐らくはマイケル・カスクーナの尽力で現在の形として発表されたものと思いますが(もともとは、ブカ・アーヴィン名義で出された2枚組の未発表演奏集のAB面でした)、後にパーラン名義に変わりまして、このタイトルになりました。
ブルーノート特有の、非常にカッチリとした構成と硬質な録音とミンガス組のゴリゴリとした迫力とグリーンのコッテリしたギターが絡む、実にハイカロリーなバップのご馳走です。