Johnny Griffin『hush-a-bye』(Black Lion)
personnel;
Johnny Griffin(ts),
Kenny Drew(p),
Niels-Henning Ørsted Pedersen(d),
Albert Heath(drms)
recorded at the Monmartre, Jazzhuis, Copenhagen, Denmark, March 30 & 31, 1967
ジャズを聴き始めた頃に一番最初に好きになったテナー奏者がグリフィンでした。
写真でわかるように、グリフィンはそんなに身長がありません。あのものすごい演奏と身長のギャップがすごい人でした。
彼がリーダーであったり、サイドメンに入っているアルバムをよく聴いておりましたが、最初に魅せられたのは、何と言ってもウェス・モンゴメリーというよりもジャズ史上の傑作ライヴアルバム、『フルハウス』を聴いた時でしたね。
このアルバムはとにかくメンバーが全員素晴らしくて、毎日のように聴きまくっていました。
なので、グリフィンはウィントン・ケリーとともに私の最初のアイドルで、この2人を聴くことが私のハードバップ道でしたね。
グリフィンの魅力はその黒々としたテナーの鳴りと、興に乗れば乗るほどにものすごいスピードに吹きまくるのに、ノリがなくならないところがホントに素晴らしいところですね。
ホントに、コレに尽きます。完。
と、ココで終わってしまっては本作の紹介何もしてませんので、もう少し続けますけども(笑)、政治の激動の1960年代はジャズ内部も大変な激変期で、グリフィンのようなバードバッパーはあっという間にオールドスクーラー化し、しかも、大英帝国からのロック勢の侵略により、ジャズ全体がかなりの打撃を受ける事となりました。
グリフィンのような時代に機敏に反応してスタイルを変えたり、一挙にアヴァンギャルド化!のような事ができないタイプのジャズメンは、事実上の引退か、ヨーロッパに活路を求める他ありませんでした。
1960年代のヨーロッパのジャズは一部の天才的な人を除いて、日本同様、まだまだアメリカの模倣の域を出ていませんで、ホンモノのジャズメンがアメリカからやって来る。というのは、ファンにとっても、ジャズメンたちにとっても嬉しい事でした。
ファンはグリフィンのテナーが聴けるわけですし、ジャズメンは共演する事で実地で彼ら彼女らから学ぶ事ができるわけです。
こうして、ヨーロッパでも積極的にこうした動きに反応して、新しいレーベルが立ち上がり、アメリカからやってきたジャズメンの演奏を録音し始めました。
本作はもともと『The Man I Love』というタイトルで出ていたんですが、他のLP2枚『You Leave Me Breathless』『A Night in Tunisia』に入っていた録音をCD2枚にすべて収納し、更に当時未収録だった「The Masquerade is Over」も収録されています。
コペンハーゲンの有名なジャスクラブ「カフェ・モンマルトル」は、当時、ハウスバンドのような形で、ケニー・ドリュー、ニールス=ヘニング・オルステッド・ペデルセン、アルバート・ヒースがいまして、同じメンツでデクスター・ゴードンが、『The Monmartre Collection』というライヴ盤を本作と同じブラック・ライオンから出してます(コレもまた名盤です)。
デックスの名盤、『The Monmartre Collection』!!
本作は、先述の事情もあり、オリジナルの曲順がかなり違ってしまっておりますので、オリジナル通りに聴きたい方は、プレイリスト機能を使って、曲順を変える必要がありますけども、さほど大変ではないですよね。
ちなみに、オリジナルは、
1.The Man I Love You
2.Hush-A-Bye
3.Blues for Hervey
4.Sophisticated Lady
5.Wee
の曲順です。
私がとりわけ好きなのは、最初の二曲で、グリフィンの快調に飛ばしまくる演奏と、黒々とした、グリフィン独特の高音がキューッと鳴り、低音はボオウと響くテナーの魅力がトコトン味わえるところでしょうね。
どんなに速く吹いても、フレーズが雑にならないですしお客さんも最高に興奮きているようで、思い切り声が入っています。
生で聴いたら、どんなかよかったでしょうねえ。
ケニー・ドリューの吹きまくりテナーを的確にサポートするドリューのピアノが実に素晴らしいですね。
ケニー・ドリューは早くから活動拠点をヨーロッパに移していました。
バップが好きな方で、このアルバムが嫌いになる要素はほとんど皆無であり、要するにジャズファンは必須のアルバムという事になります。
現行のCDのデザインはコレになりますので、ご注意を。