The Curtis Counce Group『Landslide』(contemporary)
personnel ;
Jack Sheldon(tp), Harold Land(ts),
Carl Perkins(p), Curtis Counce(b),
Frank Butler(drms)
recorded at Contemporary Records’ Studio,
Los Angeles, October 8 & 15, 1956
主に西海岸のジャズシーンで活躍していたベイシスト、カーティス・カウンスに注目してアルバムを買っているジャズファンはそれほどいるとは思えませんが、本作は、そんな彼の隠れ小傑作とも言えるものです。
カウンスは自身のプレイで個性を発揮するのではなく、全体のバランスをつねに考えるタイプのミュージシャンですね。
サイドメンもいわゆるビッグネームと呼べる人もいませんし、そもそも、カウンスは1963年に早逝しているので、リーダー作も多くありません。
カウンスは、自らのクインテットに「グループ」と名づけて活動しているのが、タイトルからわかりますが、この録音は、非常にアンサンブルを重視しており、それがコンテンポラリー特有の(名エンジニア、ロイ・デュナンによるものです)、明るくてとてもクリアな録音によって更に明確なものとなっています。
ハードバップのめざるところのアンサンブル、作曲、編曲、アドリブソロの整合性に西海岸のスムースさが加わっているのが、東海岸のジャズとは明らかに異なる美意識です。
とは言え、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチのクインテットのメンバーであった、ハロルド・ランド、カール・パーキンス、フランク・バトラー、そしてカウンスはアフリカ系であり、同じ西海岸のアート・ペッパーやチェット・ベイカー、ジェリー・マリガンと言った白人中心のコンボと比べると、いい意味で黒さがあります。
クリフォード・ブラウンとの伝説的なクインテットを、「ツアーで家族と長期間離れるのがイヤ」という理由で脱退した、ハロルド・ランド。
決して派手さはありませんが、西海岸のシーンを支えた、カール・パーキンス。
この、東海岸ほど黒くなく、西海岸の白人中心のジャズとも違うという、絶妙なところにあるのが、本作の魅力で、それは、とりわけ、「Time After Time」「Sarah」のようなスローナンバーに顕著です。
クインテット唯一の白人、ジャック・シェルドンの好演も素晴らしいです。
ジャズ史を大きく変えたわけでもなく、メンバーに後に有名になったミュージシャンがいるわけでもないですが、ジャズファンというものが、最終的にどういうものを求めているのかを知るにも格好のアルバムです。
残念ながら、現在、やや入手が困難で、中古を探す必要がある事は付け加えておきましょう。
驚くべき事に、このジャケットを撮影したのは、ウィリアム・クラクトンです。