Mark Shim『Mind Over Matter』(Blue Note)
personnel;
Mark Shim(ts), Geri Allen(p),
David Fiucynski(g, vo),
Curtis Lundy(b),
Eric Harland(drms),
Ralph Peterson(drms, tp)
recorded at System Two, Brooklyn, NY on February 19 & 20, 1997
現在見ると、ジャケットの写真のマーク・シムや若さに驚きますが、コレがブルーノートから発売された彼のソロデビュー作です。
彼ほど新作が望まれるテナー奏者はいないでしょう。
一聴してすぐに気がつくのは、彼のテナーの演奏はジョー・ヘンダーソンにものすごく似ているという事ですね。
しかしそれは単なるモノマネではなく、ソロの組み立てはやはりオリジナルのものです。
デビュー作ながらサイドメンが名手揃いで、ブルーノートから相当な期待が寄せられていたのがわかりますが、結局、コレを含めてリーダー作はブルーノートから2枚しか出ておらず、その後、目ぼしいリーダー作がないのはなぜなのでしょうか(サイドメンとして様々な録音に名前が見えるのですが)。
なんと、ジェリ・アレンジがサイドメンとして参加しています。2017年に惜しくも亡くなりましたが、若い頃はM-Base一派として活躍しました。
それはともかく、とても新人とは思えない自信に満ちた吹きっぷりは素晴らしいとしか言いようがなく、今聴いても驚きの演奏です。
ブルーノートの久々の逸材であり、その剛毅にして、浮ついたところの全くない演奏は、新人離れしています。
そもそも、「ジョーヘンに似ている」というのは全くもって悪口でも貶しでもなく、モダンジャズでも屈指のサウンドコントロールをしているような、聴いた感じの地味な印象とは比べものにならないほどの精緻なテクニックを駆使した油断のないスタイルを学ぶというのは、ものすごく大変な事であり、シムは、そこにファンキーさ、タフさを加味していて、ハッキリ言って並外れた実力者です。
2001年に亡くなったジョー・ヘンダーソンは現在のテナー奏者に多大な影響を与えています。
アドリブソロになると、やはりシムの個性が明確に出てくるのはどうアドリブという演奏の必然的帰結ですね。
作曲がジョーヘンとはかなり違うので、そこもオリジナリティです。
こんな完成されたテナー奏者かいきなり出てくるというのは、脅威という他はないです。
現在、CDは廃盤のようですが、中古で比較的安価に入手できるようですので、ネットで探すか、中古を扱うお店で見つける事をオススメいたします。