mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

マコイの大編成志向が爆発した傑作!

McCoy Tyner『Fly with The Wind』(Milestone)

 


personnel;

Hubert Laws(alto fl, fl),

McCoy Tyner(p, arr),

Ron Carter(b),

Billy Cobham(drms)


Paul Renzi(piccolo, fl),

Raymond Dustê(oboe),

Linda Wood(harp),

Guilherme Franco(tambourine)


with strings

William Fischer(conductor)


recorded at Fantasy Studios, Barkley, California on January 19-21, 1976

 


音楽性の齟齬が著しくなり、1965年12月にジョン・コルトレインのカルテットから脱退したマコイ・タイナは、2020年に亡くなるまでほぼ現役でした。

 

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マコイの死によって、黄金のカルテットは全員亡くなった事になります。


彼なくしてあのカルテットのサウンドはあり得なかったほどの、ジャズ史における重要人物ですが、そんな彼の最高傑作とも言えるアルバムがコレだと思います。


フルートのみをフロントとするカルテット編成を基本に、オーボエやハープなどをゲストに加え、更にはストリングスまで入った大作です。


当時、このアルバムがどのように評価されたのか知りませんが、マッコイのどこまでも前進していくようなピアノは、しばしばワンパターンになりがちですけども、それをこの大編成によって、いい意味で制御がうまく効いていて、音楽的にとても完成度が高いです。


「制御されている」と言っても、マッコイのピアノは相変わらずのフルスロットルで、それをビリー・コブハムが煽りまくっております。


そこにマッコイ自らアレンジしたストリングスがサウンドとしてクールダウン効果を与えており、そこが見事に1970年代のサウンドとして見事なんですよね。


1974年にジェフ・ベックの名盤『Blow by Blow』や、マハーヴィシュヌ・オーケストラ『Apocalypse』が売れてましたから(どちらもジョージ・マーティンがプロデュースしています)、もしかすると、マッコイは「こういうストリングスだったら、新しいサウンドとして導入できるかもしれない」と思ったかもしれません(ドラムスのビリー・コブハムはマハーヴィシュヌ・オーケストラのメンバーなのは偶然なのでしょうか)。

 

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いずれもジョージ・マーティンのプロデュースが見事にハマった傑作で、ストリングスが効果的に使われています。

 


ちなみに、マッコイはどうしてもコルトレインのカルテット在籍のイメージが強烈で見逃されてますけども、実は大編成志向が強く、1990年代にも『Turning Point』という大編成のアルバムを作っているんですね。


思えば、インパルス時代にエリントン 作品集をピアノトリオで出しているほどですから、もともとビックバンドジャズが好きだったのでしょう。


そんな彼がコルトレインが時代に過激化していくのについていけなくなってしまうのは仕方がない事だったのでしょうね。

 

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