mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

このメンツを集めるための口実がマイルズとコルトレインだったのでは?とすら。

Herbie Hancock, Micheal Brecker, Roy Hargrove『Directions in Music Celebrating Miles Davis & John Coltrane』(Verve) 

 


personnel;

Michael Brecker(ts),

Roy Hargrove(ts, frh),

Herbie Hancock(p),

John Patitucci(b),

Brian Blade(drms)


Recorded Live at Massey Hall, Toronto, Canada on October 25, 2001

 


マイルズ・デイヴィスとジョン・コルトレインの生誕75周年を記念して(2人は1926年生まれの同い年です)、カナダのトロントにある、マッセイホールで行われたライヴの模様を録音してしたもので、カナダの国営放送局CBCラジオの番組のための録音をアルバムとしてハッピーしたもので、そのための臨時編成です。


メンバーの中で、実際にマイルズとの共演のあるベテランである、ハービー・ハンコックが一応、リーダーなのでしょう。

 

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ハンコックが80歳を過ぎて未だ現役というのは、驚くべき事です。


編成はコルトレインのサックス奏法を1970年代におけるサキソフォンの奏法の基本にしてしまった人。と言える、マイケル・ブレッカーに、3人の若手ミュージシャンを加えた編成であり、ある意味、厳しいベテランが才能ある若手を鍛える。という、ある意味、ジャズの伝統とも言える構図です。

 

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ブレッカー以前/以後という線引きが可能なほどの影響を与えた、マイケル・ブレッカー。とにかく驚異的なテクニックの人でした。


とは言え、実際に聴いてみると、すでに20001年にはハーグローヴ、パティトゥッチ、ブレイドの3人はもうジャズメンとしてはもう一流どころであり、その後、3人は素晴らしい活躍をしております。


ハーグローヴのみが若い頃からかかえていた病気もあり、2018年に惜しくも亡くなりましたが、パティトゥッチとブレイドは、今やジャズシーンのトップミュージシャンたちです。

 

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「ソウル・クエリアンズ」の一員でもあった、ロイ・ハーグローヴ


アルバムのタイトルからわかるように、当時は、ロイ・ハーグローヴはたいへんもてはやされており、その事もあり、ハンコックはバーグローヴを起用したのだと思いますが、バーグローヴの良さは、凄腕の人々と共に猛烈に切磋琢磨していくような世界を追求していくタイプの人というよりも、同世代の様々なミュージシャンとサウンドクリエイトしていく事に才能が羽ばたいていくるタイプの人なので、この豪傑揃いの中ではやや線が細く感じます。


ハンコック、ブレッカーの両名の凄さは今更説明する必要もないですが、もう、余裕綽々にすごいですね。


ヴァーヴは明らかに「ベテランの余裕あるジャズ」を売ろうとしているレーベルてますが、その思惑通りの凄みと余裕の同居する演奏です。


とは言え、「トランジション」「Dトレイン」でのハンコックのソロの熱演は、ベテランの余裕では片付けられないものがあります。


対するブレッカーも、「ナイーマ」でなんと独演です。テナー奏者は全部譜面に起こして完コピしたくなるのでは。

 

ついつい、ジャズ根性が出てしまうのが嬉しいではないですか。


ハーグローヴの良さが出ているのは、「My Ship」ですね。こういう繊細なプレイにこそ、彼の良さがあると思います。


すでにウェイン・ショーターのカルテットのサイドメンであった、パティトゥッチとブレイドは、後にチック・コリアのトリオのサイドメンもつとめ、彼の最高傑作の1つである大作『Trilogy』にも貢献していますが、ここでも実に柔軟にベテラン2人と同世代のハーグローヴを支えています。

 

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ジョン・パティトゥッチとブライアン・ブレイドは今や説明不要のミュージシャンとなりました。


コレほど素晴らしい演奏をしているのに、アルバムタイトルに2人の名前がないのは一体どういう訳なのか。と、遅まきながら抗議する必要があろうかと思うのですが。


ところで、このライヴが行われたマッセイホールと言えば、チャーリー・パーカー、ディジー・ギレスピー、バド・パウエルマックス・ローチという、ビバップの神々によって、1953年5月15日に行われたライヴの会場でもあります。


このライヴは、宣伝がほとんど行き届かず、集客は大変に悪く、録音状態にも問題があったという散々な結果だったのですが、ミンガスが録音テープを預かり、よく聞こえないベイスの演奏を上から重ねて、ミンガスが運営するレーベル、「デビュー」から発売されました。


権利の問題で、「The Quintet」という名義で、パーカーの名前も「チャーリー・チャン」と変名になっていました。


このコンサートはアンダーグラウンド・ミュージックであった、ビバップのライヴではないので、観客は目一杯入っているのが録音でもわかり、国営放送局のラジオの音源となるものですから、音質も素晴らしいものですのでご安心を(笑)


マイルズもコルトレインの生誕75周年記念というのよりも、臨時編成の一夜限りのライヴでこらだけの事を平然と成し遂げ、しかも、アルバムとしても販売できてしまうところが、驚愕なわけですね。


既にこのライヴ盤が発売されて21年も経っていることに驚きますけども、マイケル・ブレッカーロイ・ハーグローヴが既に亡くなっている事にも、年月というものを感じざるを得ないのでした。。

 

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