mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

ジャズにおけるアメリカーナの開祖にして、元祖SSW !

Hoagy Carmichael『Hoagy sings Carmichael with Pacific Jazzmen』(Pacific Jazz)

 


personnel;

Hoagy Carmichael(vo, whistling),

Harry Edison & Conrad Gozzo(tp) or

Don Fargerquist & Ray Linn(tp),

Jimmy Zito(bass trumpet),

Art Pepper(as), Harry Klee(as,fl),

Mort Friedman(ts,cl), Marty Berman(bs,bcl),

Jimmy Rowles(p, celeste),

Al Hendrickson(g),

Joe Mondragon or Ralph Pena(b),

Irving Cottler or Nick Fatool(drms),

Johnny Mandel(arr, cond) 

 


recorded at Forum Theatre, Los Angeles, September 10, 11 & 13, 1956


ジャズのスタンダード曲を多く作曲した、ホーギー・カーマイケルが、ほとんど唯一録音したアルバム。


カーマイケルは1899年生まれですから、デューク・エリントンと同い年ですが、なんと、インディアナ大学ロースクールを卒業し、インディアナ州の弁護士資格を持っています。

 

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ホーギー・カーマイケルは、純然たるジャズミュージシャンというわけでもないです。そこが重要ですね。


とはいえ、音楽活動の方が熱心で、とりわけ、作曲家として、多くの曲を書き、ジャズのスタンダードとなるのみならず、ポップスのクラシックともなりました。


と、同時に、カーマイケルは、演奏活動もしており、彼の歌やピアノが残されています。


本作はLP時代に残されたもので、今から見ると、まさに元祖シンガー&ソングライターのアルバムともいえます。


お世辞にもうまいとは言えないカーマイケルの歌は、なかなか味があり、この歌い方は、トム・ウェイツの初期のスタイルやモーズ・アリソンジョージィ・フェイムジェームズ・テイラーらに影響を与えたと思います。

 

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トム・ウェイツの初期のジャジーな歌い方のルーツはカーマイケルにあるのでしょう。


要するに、カーマイケルは元祖シンガー&ソングライターであり、ジャズ以外のミュージシャンへの影響がとても大きい人だと思います。


パシフィック・ジャズの常連ジャズミュージシャンが参加し、マンデル・ロウが指揮とアレンジを行なったものですが、なんと言っても、全盛期のアート・ペパーの参加が群を抜いて素晴らしいですね。

 

3日間のセッションをまとめたアルバムですが、正確なパーソナルがわかりません。

判明したもののみ記載します。


驚きなのは、「My Sweet Georgia」の作曲は実はカーマイケルで、彼自身の歌ったものは全くヒットしていないんですね。


コレをヒットさせたのは、かのレイ・チャールズであり、余りにも彼が歌ったものが有名なので、てっきりレイ・チャールズ作曲なのかと思ってしまうかもしれませんが、実はカーマイケルなのですね。

 


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レイ・チャールズ

 

大都会ニューヨークの生活に馴染めなかったカーマイケルの曲はどこかアメリカの大平原のゆったりとした風景を思わせるところがあります。


ノーラ・ジョーンズの桁外れの大ヒットアルバムとなった『Come Away with Me』の最後の曲は、カーマイケルの「The Nearness of You」であるのは、実は偶然ではないと思います。


ジャズファンがこのアルバムを発売当時に熱心に聴いていたという話は余りきいたことはないのですが、21世紀に入ると、ジャズのアルバムはむしろ、本作のような、一聴、ジャンル分けが困難なものになっており、むしろ、本作は今となってはジャズの中心的な作品になっているのかもしれません。


そういう意味で、ブライアン・ブレイドやベッカ・スティーヴンスのようなジャズミュージシャンの出現のルーツは、案外、カーマイケルにあると考えてもよいでしょう。

 

とはいえ、1950年代のアルバムですので、サウンドはジャジーなんですけども。

 

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