本書は「イスラム国」によるジャーナリスト等の殺害事件の直前に刊行されたので、それ以降の動静は書いていません。
が、そういった現在進行中の問題を見ていくための基本的に知っておかなくてはならないことを過不足なく書いており、筆者が「できるだけわかりやすく書いた」と言っている通り、これ以上ないくらいに平易に書かれた著作です。
次々と理解に苦しむ行動をとり続ける「イスラム国」への理解には、まずはこの一冊を読んでみると、日々のニュースへの理解もより深まると思います。
基本的には、英仏による、報復的なオスマン朝の解体が、シリア、イラクという、歴史的に全く根無し草の国家ができてしまったことへの捻じれに無理な力を加えてしまった(具体的にはイラク戦争です)が、この地域が持っている様々な矛盾をわざわざ叩き起こしてしまったことによるものであることが、一番大きな背景であります。
近くは、ヨーロッパ社会から疎外されて、行き場を失った若者たちの不満であります。
筆者がトルコのエルドアン大統領を非常に高く評価している点は、特筆すべきでしょう。
テロを云々する前にまずはこれを。