Kenny Drew『Home is Where The Soul is』(Xanadu)
personnel ;
Kenny Drew(p),
Leroy Vinneger(b),
Frank Butler(drms)
recorded at Spetrum Studios, Venice, California, October 15, 1978
アメリカでの活動に見切りをつけてヨーロッパに渡ってしまったドリューのような黒人のジャズミュージシャンは、少なくありませんでした。
ザナドゥは、1970年代にいわゆる「ハードバップ・リヴァイバル」の一翼を担ったレーベルですが、このケニー・ドリューの久々のアメリカでの録音は、もしかすると、彼の最高傑作と言えるものかもしれません。
ドリューは、早くにヨーロッパを拠点としてしまったため、日本では、その動静がよくつかめなくなってしまい、いわゆる「幻のジャズピアニスト」のような扱いを受けていたんですね。
しかし、現在ではヨーロッパでの録音も容易に聴くことができる環境にあり、ドリューの演奏の全貌が明らかになったのですが、そんなドリューがたまたま帰国していた折に録音された本作は、彼の常日頃の端正な演奏ではなく、珍しく黒々としたピアノタッチが全開で、名前を伏せて聴くと、もしかするとドリューと気が付かない人もいるのかもしれません。
時に、黒々と、テンポの速い曲では思いの外ラフなタッチで弾くので、ちょっと驚きますね。
もともと好不調がそれほどバラツキのある人ではないですが、ココでの演奏はいつになく絶好調で、コレが1970年代の西海岸のクリアでカラッとした録音に記録されているというのは、大変嬉しい事です。
アルバムのタイトルの直訳「ソウルのあるところがホームだ」も、そんなドリューの絶好調を見事に表現した秀逸なものとなっています。
アメリカに帰国しての録音であるのが功を奏したのでしょうか。
とかく、聴き手はミュージシャンを「⚪︎⚪︎はこういうスタイルの人だ」と決めつけがちですが、実際はいろんな事を試したりやってみた中のごく一部が録音として残っているに過ぎず、ドリューもまた、単なる「端正なハードバッパー」というだけでは推しはかれないものが、実際はあったのだ。という事がこういう思わぬホンネが吐露されたアルバムから判明するのもとても嬉しい事です。
CDのボーナストラックはあまり関心する事はないのですが、コレに入っているソロピアノ「Yesterdays」は、恐らくはLPの収録時間に入りきらないため、泣く泣くカットしたドリューの名演なので、必聴です!
こんなラフなドリューの写真は珍しいですね。