mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

新旧合わせての2023年ジャズ以外のベストです!

2023年に聴いたジャズ以外の音楽(新旧区別なし、同不順)

 


Q/N/K『21世紀の火星』

民謡クルセイダーズ日本民謡珍道中』

森高千里『今年の夏はモアベター

Buddy Miller『The Majestic Silver Strings』

Cat Power『The Greatest』、『Covers』

The Emotions『Blessed : The Emotions Anthology』

Fiona Apple『When The Pawn…』

TheFlying Burito Brothers『The Last of The Red Hot Burritos』

Jimmy Webb『Land’s End』

加藤訓子クセナキス作品集』、『ライヒ「ドラミング」』

Minnie Riperton『Perfect Angel』

Olu Dara『Neighborhoods』

OMSB『Alone』

山下達郎『For You』、『It’s A Poppin’ Time』(LP)

Peter Gabriel『Us』

Sagittarius『Present Tense』、『The Blue Marble』

Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz『Live A Little』

菊地成孔、新音楽制作工房『岸辺露伴は動かない/岸辺露伴 ルーヴルへ行く』OST

 

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新旧合わせての2023年ベストです!

2023年新旧ごた混ぜジャズベスト(同不順)

 

新作旧作分けるのも面倒なので、思いつくままに挙げてみます。というか、あげてなかった事に最近気がついたんですよね(笑)

 


Becca Steven’s & The Secret Trio『Becca Steven’s & The Secret Trio』

Charles Lloyd『Chapel』

Count Basie & His Orchestra『Afrique』

Delvon Lamarr Trio『I Told You So』

Gletchen Parlato & Lionel Loueke『Lean in』

Kenny Wheeler, Lee Konitz, Dave Holland & Bill Frisell『Angel Song』

Marlena Shaw『Who is This Bitch, Anyway ?』

Elvin Jones『Puttin’ It Together』

Omer Avital『New Song』

Valdan Ovsepian Chamber Endemble『Dreaming Paris; Theme and Variations』

Hoagy Carmichael『Hoagy Sings Carmichael』

No Tongues『Ici』

Abáse『Laroyê』

狭間美帆M_Unit『Beyond Orbits』

 

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いきなり2024年のベスト級です!

Ambrose Akinmusire『Owl Song』(Nonsuch)


personnel;

Ambrose Akinmusire(tp),

Bill Frisell(g),

Herlin Riley(drms)


recorded at 25th Street Recording Studio, Oakland, CA, March 7&8, 2023

 


アンブローズ・アキンムシーレの名前を知ったのは、スティーヴ・コールマンのバンド、「ファイヴ・エレメンツ」のメンバーとしてですが、やがて、彼のもとから自立し、リーダー作を出し、大変な評価を受けるようになります(それに伴って、スティーヴ・コールマンの評価も高まっていったように思います)。

 

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今やジャズ界を代表するトランペッターとなった、アンブローズ・アキンムシーレ。

 

そんなアキンムシーレがブルーノートからノンサッチに移籍しての本作は、コレまでの作風からあまり想像できないほど、ガラッと変わってしまっていて、驚きますね。


彼よりもベテランのビル・フリゼールのギターとウィントン・マルサリスとの活動で有名なハーリン・ライリーの3人のみのかなり変則的な編成による、かなり内省的な内容のアルバムです。

 

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変則的なトリオである事がもたらすスカスカ感が魅力です。


ノンサッチが出し続けるジャズアルバムは、ものすごく雑駁に言えば、「アメリカーナ」作品を、特に、ビル・フリゼールやブラッド・メルダウを中心に出してきたと言えると思うのですけども、スティーヴ・コールマン門下生であるアキンムシーレがこの動きにかなり積極的に合流していこうとしている事自体が驚きです。


しかも、録音はアキンムシーレの生まれ故郷である、カリフォルニア州オークランドのスタジオで行っているのも、何かコレまでの活動とは一線を画したものを作りたい。という、決意のようなものを感じます。


トランペットをリーダーとする変則トリオというと、デイヴ・ダグラスの「タイニー・ベル・トリオ」を思い出しますけども、より似ているのは、ロン・マイルズが晩年に発表していた『I’m A Man』です。


このアルバムはマイルズのみがホーン奏者で、あとはピアノ、ギター(またしても、フリゼールです)、ベイス、ドラムズという、ジャズとしてはよくある編成ですが、本作と似たような浮遊感を、マイルズのコルネットとフリゼールのギターが作り出しております。


フリゼールの当て所もなく広がるギターは、既に1980年代に確立したものであり、それ自体は新しくはないですが、ここに、ハーリン・ライリーという、ニューオリンズ出身のドラマーの手数が控えめで、重心の低いドラミングが、「地面」と音楽を繋ぎ止めつつ、アキンムシーレの、どこか哀感をたたえた演奏がどこかに飛んでいってしまわないように括り付ける役割を果たしています。


まるで、青空を飛ぶ凧のような演奏であり、最も強調されるのは、具体性のなさ。とでも言いたいような演奏であり、それが一貫した音楽であるように聴こえます。


コレを最早ジャズと呼ぶべきなのか。とすら躊躇してしまいますが、もしかすると、当人たちはそう呼ばれなくても一向に構わないと思っているのかも知れません。


しかし、ジャズというのは、特定の演奏形式や固有の楽器すら存在しない、変転し続けているジャンルですので、コレもまたジャズの新しい変転の姿と見る事もまた可能です。

 

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ドリューと言えば私はコレが一番好きです。

Kenny Drew『Home is Where The Soul is』(Xanadu)

 

personnel ;

Kenny Drew(p),

Leroy Vinneger(b),

Frank Butler(drms)

recorded at Spetrum Studios, Venice, California, October 15, 1978

 

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アメリカでの活動に見切りをつけてヨーロッパに渡ってしまったドリューのような黒人のジャズミュージシャンは、少なくありませんでした。


ザナドゥは、1970年代にいわゆる「ハードバップ・リヴァイバル」の一翼を担ったレーベルですが、このケニー・ドリューの久々のアメリカでの録音は、もしかすると、彼の最高傑作と言えるものかもしれません。

 

ドリューは、早くにヨーロッパを拠点としてしまったため、日本では、その動静がよくつかめなくなってしまい、いわゆる「幻のジャズピアニスト」のような扱いを受けていたんですね。

 

しかし、現在ではヨーロッパでの録音も容易に聴くことができる環境にあり、ドリューの演奏の全貌が明らかになったのですが、そんなドリューがたまたま帰国していた折に録音された本作は、彼の常日頃の端正な演奏ではなく、珍しく黒々としたピアノタッチが全開で、名前を伏せて聴くと、もしかするとドリューと気が付かない人もいるのかもしれません。

 

時に、黒々と、テンポの速い曲では思いの外ラフなタッチで弾くので、ちょっと驚きますね。

 

もともと好不調がそれほどバラツキのある人ではないですが、ココでの演奏はいつになく絶好調で、コレが1970年代の西海岸のクリアでカラッとした録音に記録されているというのは、大変嬉しい事です。

 

アルバムのタイトルの直訳「ソウルのあるところがホームだ」も、そんなドリューの絶好調を見事に表現した秀逸なものとなっています。

 

アメリカに帰国しての録音であるのが功を奏したのでしょうか。

 

とかく、聴き手はミュージシャンを「⚪︎⚪︎はこういうスタイルの人だ」と決めつけがちですが、実際はいろんな事を試したりやってみた中のごく一部が録音として残っているに過ぎず、ドリューもまた、単なる「端正なハードバッパー」というだけでは推しはかれないものが、実際はあったのだ。という事がこういう思わぬホンネが吐露されたアルバムから判明するのもとても嬉しい事です。

 

CDのボーナストラックはあまり関心する事はないのですが、コレに入っているソロピアノ「Yesterdays」は、恐らくはLPの収録時間に入りきらないため、泣く泣くカットしたドリューの名演なので、必聴です!

 

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こんなラフなドリューの写真は珍しいですね。

 

 

 

 

vol.21のセットリストです!

エリントンを聴く vol.21  

黄金の日日(3) ウェブスター=ブラントン

時代 前編~

 

                  

1.Opening

1)Take The “A” Train(Strayhorn) 

  recorded at RCA Victor Studios, Hollywood,CA  

  on February 15, 1941

 

2.Ivie Anderson最後の輝き

2) So Far, So Good(Jack Lawrence, Jimmy Mundy, E.G. White)  

 recorded at RCA Victor Studios, Chicago

 on March 7, 1940

3)Me and You(Ellington)

  recorded at RCA Victor Studio A, Chicago

  on March 15, 1940

4)At A Dixie Roadside Diner(Joe Bruke, Edgar Leslie)

  recorded at RCA Victor Studio 2, NYC

  on July 22, 1940

5)Jump for Joy(Ellington, Paul Francis Webster, Sid Kuller)

 recorded in RCA Victor Studios, Hollywood,CA

 on July 2, 1941

6)I Don’t Mind(Ellington, Strayhorn)

  recorded at RCA Victor Studios 1, NYC

  on February 26, 1942

7)Five O’clock Whistle(Kim Gannon, Joseph Myrow, Gene Irwin)

  recorded at RCA Victor Chicago Studio B,

  Chicago on September 5, 1940

8)Chocolate Shake (Ellington, Paul Francis Webster)

  recorded at RCA Hollywood Studios ,CA

  on June 26, 1941

9)I Got It Bad(and That ain’t Good) (Ellington, Paul Francis Webster)

   same personnel and date on 8)

 

3.The Genius of Jimmy Blanton

10)Ko-Ko(Ellington)

   recorded in RCA Victor Studios Chicago

   on March 6-7, 1940

11)Jack The Bear (Ellington)

  Same date and personnel on 10)

12)Sepia Panorama(Ellington)

   recorded in RCA Victor New York Studio 2

   on July 22, 1940

13)In A Mellow Tone(Ellington)

   recorded in RCA Victor Chicago Studio 2

   on September 5, 1940

14)-1 Pitter Panther Patter(Ellington)      

   recorded in RCA Victor Chicago Sudio A

   on March 6, 1940

14)-2 Pitter Panther Patter(Ellington)

   recorded at United Recording, Las Vegas,  

   Nevada on December 5, 1972

15)Body and Soul(Edward Heyman, Robert Sour, Frank Eyton, John Green)

  same personnel and date on 14)-1

16)Irene(Hampton Hawes)

  recorded at Kendun Recorders, Burbank,

  CA on January 25, 1976

 

4.Ending

17)Warm Vally(Ellington)

  recorded at RCA Victor Chicago Studio A

  on October 17, 1940

 

       

参考CD

1)~14)-1,15),17) Duke Ellington『Never No Lament : The Banton-Webster Band』(bluebird)

14)-2 Duke Ellington and Ray Brown『This One’s for Blanton』(Pablo)

15)Charlie Haden and Hampton Hawes『As Long As There’s  Music』(Artists House)

 

参考文献

Duke Ellington『The Complete RCA Victor Recordings 1927-1973』(RCA)よりブックレット

 

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エリントンvol.22です!

エリントンを聴く vol.22 黄金の日日(4)〜ウェブスター=ブラントンー時代 後編〜

 

後編はエリントンの右腕であり、左腕でもある、ビリー・ストレイホーンを中心に聴いていきたいと思います。

 

彼が加入した事によって、いかにオーケストラの演奏のクオリティが上がっていったのかを改めて聴いていきます。

 

今回から支払いは入場料のみとし、フードとドリンクの持ち込みは自由といたします。

 

向かいにローソンもありますので、途中退席してご利用いただいても結構です。

 

予定の変更がある場合がありますので、出発前に必ずブログにて、日時を確認してお越しください。

 

変更等は事前にブログにて情報更新いたします。

 

 

エリントンを聴くvol.22

2024.4.26(金)

高円寺三角地帯

杉並区高円寺北2-1-24 村田ビル1階
最寄り駅:JR高円寺駅(北口から右折。
高架に沿って中野方面に徒歩5分)
open 19:30
start 20:00-22:30
料金1500yen(お支払いは現金のみです。フード、ドリンクの持ち込みは可)

https://koenji-sankakuchitai.blog.jp/archives/23352508.html

 

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21世紀にこんなストレートな演奏があったのか!と驚くライヴ録音です!

Ali Belogenis Morris『Live at Tonic』(DIW)

personnel;

Louis Belogenis(ts,ss), Wilber Morris(b),

Rachied Ali(drms)

 

live recorded at tonic, New York City,

on January 6, 2001

 

 

どひーっ(笑)!


すごいアルバムでございます!


21世紀の初めに、ド直球のフリージャズですよ!!!


写真を見なければ、ルイ・ベロジェニス(と読むのでしょうか?)というサックス奏者が白人だとはわからないほどに、60年代のアフリカ系アメリカ人のように聴こえますし、そもそも、コレが2001年の演奏というのは、にわかに信じられないでしょうね。

 

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ベロジェニスは比較的世に知られるのに時間がかかったようですが、見事という他ありません。


何しろ、ドラムがコルトレインの最晩年のコンボで活躍してしたラシード・アリですので、ますます1960年代の黒人フリージャズだと思い込んでしまいます。


なぜ、今更フリージャズなのか?はさておき、ここまで何の衒いもなくフリーであるというのは、もはや清々しいものがあります。


ちょうど、1990年代から2000年代のジャズはジャズミュージシャンがみんなアタマが良くなりすぎて、ちょっとジャズが難しくて聴いてて疲れてしまう方向に向かっていた時期で、中には大変優れたものもあり、未だに愛聴するアルバムはあるのですが、それにしても、シンドイ作品が多かったように思います。


その中で、このアルバムは「戦略なし」という戦略で、とにかく果敢に吹きまくり、叩きまくり、弾きまくるんですね。


とはいえ、ジャズで演奏される楽器は所詮はアクースティックですから、ロックのような大爆音が出るわけではなく、実は、よく聴くと絶妙にスカスカしております。


本作は3人の演奏がダンゴになってぶつかり合っている事は実はあんまりなくて、そういう意味では、60年代のフリーをまんまやっているわけではなくて、ソウルミュージックみたいなわかりやすいノリではないですが、大ベテランのラシード・アリのドラムズは、見事なグルーヴを生み出してます。

 

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ラシード・アリは2009年に亡くなっています。


正直言いますと、私、コルトレインと共演している頃の彼の演奏はそんなによいと思っていなくて、故に、ドラマーとして彼の事を評価してなかったんですけども、この、はちゃめちゃになりそうで絶対にならない演奏に、ホトホト感心しました。


そのシッカリとした土台の上でベロジェニスのテナーとソプラノがあたかもアルバート・アイラーが乗り移ったかのようなブロウを連発する、この気持ちよさにハマると、もう、ジャズはやめられなくなります。


「アイラーが乗り移ったか」と言っても、単なるモノマネをしているんではなくて、ちゃんとベロジェニスの演奏になっていて、オリジナリティがあるのところが素晴らしいです。


ウィルバー・モリス(ウォーレン・ブッチ・モリスの兄です)は敢えて地味な演奏に徹していますが、それによってサックスとドラムズがちゃんと目立つように配慮しているところは、やはり、今日の演奏ですね。

 

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実はウィルバー・モリスは2002年に亡くなっています。


本作はタイトル通り、ニューヨークにかつて存在した「トニック」という大変有名なクラブでの演奏ですので(2007年に閉店しました)音響的には決して褒められたものではないですが、それ故に伝わってくる生々しさがダイレクトに伝わってくる、近年では珍しいライヴの傑作だと思います。


DIWから出ていたアルバムで、残念ながら現在廃盤ですが、適度な値段で中古で出回っています(amazonは法外に高いです)。


再発を強く希望します。

 

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