mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

今をときめくジャズメンに現人神が降臨して作られた、大作アルバム!

Blue Note All-Stars『Our Piont of View』(Blue Note)

 

personnel;
Marcus Strickland(ts),

Ambrose Akinmusire(tp),

Lionel Loueke(g,vo),

Robert Glasper(p,el-p),

Derrick Hodge(b,el-b),

Kendrick Scott(drms)


Wayne Shorter(ss),

Herbie Hancock(p),


recorded at CapitolStudios,Hollywood,CA

 

 

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本作のプロデューサーはグラスパーとこのドン・ウォズです。ウォズは現在のブルーノートの社長であり、ミュージシャンでもあります。

 

 


タイトル通りの、現在のブルーノートの腕っこきばかりを集めて作られた作品であり、CD二枚組みで90分を超える大作です。


ゲストとして、モダンジャズの現人神である、ウェイン・ショーターハービー・ハンコックがDisc2の「Masquelero」のみゲストとして参加しており、Disc1の「Henya」は、アンブローズ・アキンムシーレとデリック・ホッジのみの演奏となり、トランペットとベイスの多重録音による作品となってます。


たったの一曲ではありますが、ショーター、ハンコックという現人神が参加している事からわかるように、ブルーノートというよりも、むしろ、全体の基調になっているのは、1960年代のマイルス・クインテットです。

 

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ウェイン・ショーター猊下

 

 

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ハービー・ハンコック陛下!

 


まあ、ショーターとハンコックは、1960年代にクインテットに所属しながらも、ブルーノートでリーダー作を出していたので、60年代マイルスとブルーノートは全く無関係ではないんですけども、この2つは微妙に違いますね。


ブルーノートでのハンコックやショーターはよりカッチリと作りこんでいますが、このメンバーでライヴをしているわけではなく(マイルス・クインテットが忙しく過ぎましたし)、アルバムのみの出来事なのですが、マイルスはライヴでの大暴れとラボラトリーとしてのアルバムのような二面性をもってますね。


で、本作のDisc1は、60年代マイルスをベイスとするスタジオのみの存在、即ち、新主流派的な世界ですが、およそ18分に及ぶ最長の演奏となる、「Witch Hunt」はモロに60年代のマイルス・クインテットですね。


しかしながら、単に60年代マイルスをなぞるような、懐古趣味を狙っているのではなく、ベナン出身のギタリスト、リオネル・ルエケが入っているのがやはりミソですね。

 

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現役最高峰のギタリストの1人、リオネル・ルエケ。


彼の独特のクワーン、キューンと鳴る不思議な浮遊感のあるギターサウンドが加わると、味わいが明らかに変わってきますね。


そして、デリック・ホッジ作曲の「Second Light」で彼らのホンネである、ソウルとジャズの融合が垣間見れますね。

 

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グラスパーの相棒でもあり、リーダー作もある、デリック・ホッジ。

 


しかし、彼らの本領がより発揮されているのは、Disc2でしょう。


ショーター作曲「マスカレロ」(マイルスのアルバム『ソーサラー』に収録されています)にショーター、ハンコックが降臨しますが、俄然演奏の緊迫感が違いますね。

 

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ティーヴ・コールマンのサイドメンがこんなにメジャーになるとは思いもよらなかった、アンブローズ・アキンムシーレ。バリバリに吹きまくってます!

 

 

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いざ、テナーに専念すると、彼のルーツがジョー・ヘンダーソンである事がよくわかる、マーカス・ストリックランド。

 

 

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ドシン!と重い一打を繰り出す、ケンドリク・スコット。様々なバンドに引っ張りだこです。

 


単に60年代のマイルスの再演ではなく(そもそも、ハンコックとショーターがそういう事を一切してません)、あくまでも現代のサウンドとして演奏しているのが素晴らしいですね。


コレが「伝統の継承」なのだと思います。


コレに続くデリック・ホッジとリオネル・ルエケの曲はもはやブルーノートの伝統とかマイルスを表面的にもなぞる事など全く御構いなし。


リオネル・ルエケが大活躍しております。


ロバート・グラスパー以降のジャズにはちょっとついていけないなあ。という方には、まずはこのアルバム辺りから聴いてみて、このアルバムに参加しているジャズメンのリーダー作なり、サイドメンとして参加しているアルバムなどを聴いてみるのがよいでしょうね。


その辺は昔ながらのジャズの聴き方でよいのだと思います。

 


リーダー作ではあまりソロを取らないグラスパーのソロがここではタップリと聴く事ができ、そして、やはりというべきか、素晴らしいものです。

 

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近年のリーダー作は少しチャラい気がしますが、ここでのグラスパーはガチでジャズしてます。

 


派手な事はそれほどしてませんけども、バッキングによってコンボの方向性を的確に示していくところなどやはりさすがと言わざるを得ません。

 


なお、本作は、ブルーノートの再建に尽力した、ブルース・ランドヴァルに捧げられております。

 

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いっぺんに全部聴くのはさすがにシンドイですから、今日はDisc1を聴く!という聴き方の方がよいでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在のジャズシーンの先駆をなす傑作!

The RH Factor『Hard Groove』(verve)

 


Personnel;

Roy Hargrove(tp,flh,vo,p,perc,arr),

Keith Anderson(as),

Jacques Schwarz Bart(ts,as,fl,g),

Bernard Wright(keys),

Bobby Sprks(clavinet,Rhodes,Arp),

Spanky(g),

Reggie Washington(b),

Jason Thomas(drms),

Daniel Moreno(perc)

 


Common(vo),Q-Tip(vo),

Erykah Badu(vo),

Anthony Hamilton(vo),

D’Angelo(vo,Wurlitzer),

Anthony Hamilton(vo),

Stephanie McKay(vo),

Shelby Johnson(vo),

Renee Neufville(vo),

Steve Coleman(as),

Keith Loftis(ts),

Karl Denson(fl),

Tony Suggs(org),

James Poyser(el-p,keys,vo),

Tony Suggs(org),

Marc Cary(Wurlitzer),

Cornell Dupree(g),

Pino Palladino(b),

Meshell Ndegeocello(b),

Willie Jones lll(drms),

Gene Lake(drms),

Dontae Winslow(vo,MPC drum machine,finger snaps),

Maurice Brown(vo),Butter(vo,virtual drums,MPC drum machine),

Kwaku Obeng(perc)

 

 

 

Recorded at Electric Lady Studios,New York City in January-February,2002

 


Additional recording March and September,2002

 

 

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ジャズファンに彼の活動はよく理解されていなかったのではないかと思います。

 

 

正直に申し上げると、ロイ・ハーグローブには余りよい印象は持ってませんでした。


恐らく、ヴァーヴから出ていたアルバムだったと思いますが、聴いてみて、何か線が細くて、弱々しい印象が強かったです。


後から思えば、彼の吹き方は、明らかに意図的に狙ったものである事がわかるのですけども、トランペットに気合と根性をつい求めてしまうジャズ体質が、ハーグローブへの理解を妨げてしまった感は否めません(とはいえ、ジャズという音楽は気合いと根性の音楽であるのは、ある程度今でも言えますけどね)。


本作は、ハーグローブがホントにやりたかった事をようやく吐き出した作品ですね。


パーソネルの莫大さには驚きますが、そのメンツを見ますと、とりわけゲスト陣にジャズメンはほとんどいないですよね。


コーネル・デュプリーのような大ベテランの参加も驚きますけども(スティーヴ・コールマンまでいますよ!)、ラッパーのQ-Tipやコモン、エリカ・バドゥディアンジェロウ、ピノ・パラディノ、ミシェル・ンデゲオチェロ、ジェームズ・ポイザーなどの参加がやはり目を引きます。


コレは、いわゆるネオソウルと呼ばれる人々の一群であり、簡単に言ってしまうと、1990年代にヒップホップとR&Bを結びつける事に成功させた人々なんです。


実は、ロイ・ハーグローブは、このネオソウルのムーヴメントに深く関わっており、「ソウル・クエリアンズ」という集団の一員でした。


ハーグローブの仕事として一番際立っているのは、ディアンジェロウのアルバム『Voodoo』での演奏&ホーンアレンジですが、そこでのアレンジを彷彿とさせる、恐らくは一人で多重録したと思われるホーンアレンジが本作でも聴けます。


ピノ・パラディノもディアンジェロウのもとでの活躍が素晴らしいですしね。


とにかく、本作のベースとなっているのは、いわゆるジャズではなくて、ネオソウルなんですよね。


ものすごく端的に言うと、ハーグローブは、ジャズとネオソウルを融合する事で、ジャズ、ヒップホップ、R&Bを結びつけたかったわけです。


ハーグローブは1990年代に、あらゆるジャズジャイアントと共演をするほどの名手でしたが、私は彼のやりたかった事はやっぱりそこにはなかったのではないのか。と、本作を改めて聴いて痛感します。


ハーグローブは1969年生まれですから、物心ついた時にモダンジャズが周りに流れていた。という事は考えにくいですよね。


ファンクやソウル、そして新興勢力であるヒップホップが生活の中で普通にかかっていていたのであって、ハードバップは意識的に選びとらないとなかなか入ってこないでしょう。


ハーグローブは、ジャズというものが、特定の演奏形式を指すものではない事にある段階で気がついていたと思います。

 

過去の演奏をなぞったり、特定の演奏形式を守る事に意味を見出してはいなかったのではないでしょうか。

 

しかし、彼の中にある、ブラックミュージックとジャズの融合がそんなに簡単な事ではないのも、よくわかっていたんだと思います。


そこに、ヒップホップの、とりわけ、コンシャス系と呼ばれる人々とソウルの融合が、「ネオソウル」という形で成し遂げられた動きに彼が引き寄せられていったのは、ある意味必然だったのでしょう。


ジャズっぽいリズムなど一切放棄し、新たなスムースさ、アーバンさ、そしてブラックネスを獲得したサウンドは、今聴いてもホントに素晴らしく、ハーグローブのトランペットが曲想に見事にハマり、彼の中にはこういうサウンドが鳴っていて、そのためのソフトな奏法であった事がとてもわかります。


しかし、発売当時、本作の素晴らしさを正確にとらえていたジャズファンは余り多くなかったのではないでしょうか。


私も先に述べた理由から、当時は聴いてもいませんでした。


しかし、ディアンジェロウ『Voodoo』をたまたま聴くと、非常に印象的なホーンアレンジが入っていて、それがハーグローブである事を後に知り、彼に対する考え方が変わり、そうこうするうちに、ロバート・グラスパーグラミー賞を取った、『Black Radio』以降のジャズシーンの変化を見るにつれて、このアルバムの重要性にようやく気がついてきました。


そこで改めて聴いてみると、コレは、音楽集団「ソウル・クエリアンズ」による、ジャズ方面の作品である事がわかり、この集団の全盛期を記録したものである事がようやくわかってきたんですね。


しかし、この事に気がついた時には、残念なことに、2018年にハーグローブが亡くなってしまったんですね。。


コレから、RH Factorの活動の再評価が進んで、ハーグローブの評価も高まっていくであろう時であったと思うのですけども、ホントに残念でなりません。


2000年代のジャズが非常に混迷していた時期に、現在のジャズに直結する傑作が生み出されていた事をまだ聴いた事ない方は、是非とも聴いてみて下さい。

 

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ジョン・ポール・ジョーンズ@新宿ピットイン観戦記!

ロック史に巨大な痕跡を残した、レッド・ツェッペリンのベイシスト、ジョン・ポール・ジョウンズが来日し、新宿ピットインでライヴを目撃してきました!

 

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ジャズのライヴハウスとして、老舗の新宿ピットイン!

 


前売りの但し書きに、「当日はベイスを弾いたり、Zeppの曲はやりません。すべて即興演奏です」と書いてあったにもかかわらず、観客の多くは明らかにZeppファンでしたね。

 


ピットインは基本はジャズのライヴハウスなので、いつもとは明らかに客層が違いました。

 


昔、プロレスのファンで、ブルーザー・ブロディの入場曲の話をしている人(Zeppの名曲「Immigrant Song」が使われていました)、「Plant  Page Jones Bonham」と書いたTシャツを着ている人。

 


あるいは、ロバート・プラントそっくりな髪型をして、腕にロックな刺青を入れている人。

 


まあ、ジャズファンにこんな人たちはいませんよ(笑)。

 


ピットインのお客さんは、ほとんど男性ですけども、このライヴは男性の割合はいつもの通りなのですけども、なんというか、熱量の質が違いますね。

 


あついですよ、Zeppファン!

 

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あつい!! 


私みたいに、即興が聴きたくて来た人は、一割もいなかったでしょうか。

 


Zeppも即興も聴くという人は、相当な少数派でしょうか。

 


ゲストは、恐ろしくん豪華で、大友良英ジム・オルーク芳垣安洋です。

 

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今はなき六本木スーパーデラックスみたいですけども、そこにやってくる、恐らくは大友ファンと思しき外国人とは明らかに違うタイプの人がいましたね。

 


面白くて止まらないので、前置きが長くなってしまいましたが、演奏に話を移しましょう。

 


演奏は前後半に分かれます。

 


前半は、JPジョウンズとチェリストのアンシ・カルトゥネンとのデュオです。

 


結論から申し上げると、面白くなかった。

 


エレクトロニクスの使い方があんまり上手ではないし、チェリストの演奏がとりわけ面白味に欠けました。

 


2人の演奏がお互いをあんまり触発できていないように私には聞こえましたね。

 


マンドリンの演奏をループさせたりするのも、ビル・フリゼールのものすごいものを私はライヴで聴いてしまっているので、JPの演奏それほど良いとは思えませんでした。

 


途中で帰った外国人の女性の方がいましたね。

 


即興のファンでもなさそうでしたし、もしかすると、トム・ヨークがやっているようなものがエレクトロニカで聴けると誤解していたのかもしれないですね。

 


観客のアトモスフィアは正直で、だんだんと緩慢では淀んできているのがわかります。

 


そして、10分ほどの休憩の後に、大友、オルーク、芳垣が参加する後半が始まるのですが、コレが、ガラッと変わります。

 


こんなにまで違うのか。というくらいに別次元ですね。

 


即興音楽の世界で欧米から高く評価されている大友良英のギターの演奏は、全体にものすごいダイナミズムを与えていましたね。

 


とにかく、音の存在感がとてつもない。

 


もしかして、あの場で弾いていたギブソンのギターは、高柳昌行の遺品なのでしょうか。

 


それはともかくとして、太っとくて、ホントにいい音でしたねえ。

 


コレに、芳垣、オルークが見事に応え、演奏がムクムクと動くんですね。

 


大友は、なんと、チョコっと弓弾きまでしております(笑)!

 


今回のライヴで一番Zeppしていたのは、彼でした(笑)。

 


また、ギターリフをひたすら弾きまくる局面があり、コレに芳垣のドラムがドンドンとついていき、更に演奏全体を煽りまくる展開があったのは、ロックファンもついてこれるようにするための配慮でしょうか。

 


いわゆるロックな展開には全くなっていきませんでしたけども。

 


ラップトップのオルークも変な音を繰り出し続けていて面白かったですね。

 


こうなると、御大JPも黙ってはいません。

 


前半とは見違えるほど演奏が積極的でした。

 


アンコールの10分弱の演奏がコレまたよかった!

 

 

 

私はJPの熱狂的なファンではないので、むしろ、観客がどういう反応をするのかに興味があったので、敢えて、一番後ろから聴いてましたけども、後半の客の反応が圧倒的に良かったですし、「すげえよかった」と言いながら帰っているお客さんを私は目撃しました。

 


まあ、正直ですよね。

 


即興音楽というのは、そこそこよい。という演奏はあり得なくて、いいか悪いかしかないんですね。

 


良し悪しが余りにもダイレクトに出てしまう、とても厳しい音楽だと思います。

 


前半聴いた時は、コレはどうなるんだろうと思いましたが、それを完全にわすれさせてしまうほど、後半が素晴らしかったですね。

 


結局、日本勢(オルーク含む)がとにかく素晴らしいかった。という身も蓋もない結論になってしまうんですけども、そういう事を改めて勉強できたライヴでした。

 


出待ちの人たちが、ZeppやJPのソロ作品のレコードを持って終電がなくなる事を覚悟して待っていた姿も、印象に残りました(私は途中で帰りました)。

 


なかなか得難い体験でした。面白かったです。

 

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JPジョーンズの写真はございません!スイマセン!!

 

 

 

 

 

高柳昌行が改めてフリージャズと向き合ったトリオによる演奏!

高柳昌行アングリーウェイブズ『850113』(aketa’s disk→OCTAVE LAB.)

 

 

personnel; 高柳昌行(g),

井野信義(b), 山崎弘(drms)

 

recorded at Seibu City 8 Hall, Hamamatsu, Shizuoka in January 13,1985

 

 

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在りし日の高柳昌行

 


日本のジャズ史の中でもとりわけ異彩を放つ存在であった高柳昌行が、ノイズソロ演奏と並行して行っていた演奏のライヴ録音。

 


1985年の浜松市でのライヴですけども、聴いてすぐわかるのは、アルバート・アイラーの影響ですよね。

 


と言っても、高柳のギターは、アイラーみたいな熱狂は微塵もなく、むしろ、冷え冷えとしているところが、単なるアイラーのモノマネしているわけではないというのがよくわかります。

 


アイラーの演奏を現在聴いてみると、結構、音がスカスカで、全員アコースティックでの演奏ですから、音量もそれほどでもないんです。

 


演奏内容は激越ですけど。

 


で、この「アングリーウェイブズ」と名付けられたトリオも、ギターことエレキですけども、あのスカスカしたところがよく似てます。

 


というか、このトリオがやりたかったのは、多分、そこであったのだろうと思います。

 


一聴、すごいんですけども、音圧で圧倒するんではなくて、絶妙な隙間があります。

 


意外なほど、普通にトリオ全員のソロ回しで演奏が成り立っているので、高柳のアルバムの中でも実はオーソドックスなジャズだったりします。

 


そういう意味では、キース・ジャレットが1980年代に改めてジャズのスタンダード曲に取り組むように、「フリーの古典」である、アイラーに改めて取り組む事で、ジャズというものを考えていたのでしょうか。

 


アルバムの曲目には、「850114 1,2,3,4」としか書かれていませんが、アイラーの曲を演奏しています。

 


どんなに、ノイズに演奏が向かおうと、彼の根底には常にジャズがあったという事でなのでしょう。

 


しかも、それは単なるアメリカのモダンジャズの模倣では飽き足らず、自らの方法論を常に模索していた孤高の存在でありました。

 


その孤高さは、なかなかとっつきにくく、遺された文章もかなりのコワモテであるためか、怖い人のイメージが先行してしまいますけども、実際に習っていた方から話しを聞くと、気さくな方で、大変な博学を駆使した脱線話しが楽しかったのだそうです。

 


高柳がなくなってもう結構な年月が経ってしまいましたが、音楽の強度は今もって揺らぐ事なく屹立しております。

 


決して馴染みやすい音楽ではありませんけども、いきなりノイズソロから入るのはちょっとなあ。という方には案外、この辺から入ってみるのもいいかもしれませんね。

 


若い頃に高柳の門下生で、やがて、関係が悪化してしまって破門宣告されてしまった大友良英さんが、1990年代の終わり頃から、「ニュージャズ・クインテット」というグループを結成して、ギターを弾くようになりましたが、彼がジャズのクインテットを結成するにあたっての根底には、このアングリーウェイブズのトリオがあったものと推測されます。

 


そう言った観点からも本作の重要性はいや増してくるように思います。

 


クインテット(ONJQ)はやがてオーケストラ(ONJO)に発展し、活動を休止しますがリズムセクションのみのトリオ(ONJT)での活動を一時期行なっていましたが、そのレパートリーには、オーネット・コールマンアルバート・アイラーでした。

 

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60枚から改めて30枚を選んでみました。

1969-2018 ジャズアルバム  ベスト30 その3(完成版)

 

思いつくままに挙げた計60枚から、更にセレクトして、完成版としてみました。

 

コレも順位はありません。

 

 

 

 

Ornette Coleman『Dancing in Your Head』

 

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Joe Henderson『State of Tenor vol,1』

 

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Joe Zawinul『My People』

 

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Duke Ellington『Afro-Eurasian Ecripse』

 

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Miles Davis『Get Up with It』

 

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Steve Coleman『Resistance is Futile』

 

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Henry Threadgill’s Zooid『Up Popped Two Lips』

 

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高柳昌行阿部薫『集団投射』

 

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Roland Kirk『Volunteered Slaverly』

 

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Herbie Hancock『Flood』

 

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Wayne Shorter『Odyssey of Iska』

 

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Bill Evans『Paris Concert edition 1』

 

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Claus Ogerman『Cityscape』

 

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菊地成孔『南米のエリザベス・テイラー

 

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Hal Wilner『That’s The Way l Feel Free』

 

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Kip Hanrahan『千夜一夜物語第二集』

 

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Lionel Loueke『Gaia』

 

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Bill Frisell『Blues Dream』

 

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Gil Evans『Priestess』

 

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Charlie Haden『Ballad of The Fallen』

 

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Cassandra Wilson『New Moon Daughter』

 

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Tigran Hamasian『Shadow Theater』

 

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Paul Motian Erectric Be Bop Band『Europe』

 

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Pat Metheny Group『Still Life(Talking)』

 

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Charles Mingus『Cumbria & Jazz Fusion』

 

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Donny McCaslin『The Passion of Charlie Parker

 

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Brad Mehldau,Mark Giuliana『Mehliana』

 

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Steve Lehman & Sélébéyone『Sélébéyone』

 

 

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Egberto Gismonti『Dança das Cabeças』

 

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Keith Jarrett『Survivors’Suite』

 

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半分に絞り込むというのは実に酷な作業でしたが、結局は自分の関心事でやるしかないですね。

 

ヨーロッパは果てしなくアルバム出てますけども、ECMから何枚か選出した事で勘弁願うとして、やはり、エリントン という柱から考えるという事になりました。

 

ジャズは際限なく広がり、アルバム数もとても個人では把握しきれないほど90年代以降出てますので、全体像を描く事はかなり困難です。

 

私の選出は、あくまでも私が聴いてきたもの。としか言いようがありませんけども、内容は相当に濃厚であり、現在のジャズにつながるものであると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、30枚では到底おっつかないので、もう30枚を選定しました(笑)

30枚選んでみて、やはり、落ちてしまったのが、多すぎる。

 

という事で、「その2」を選んでみました。

 

こっちの方がより、ジャズファン度が高いと思います。

 

こちらも順位なしです。

 

 

 

【1969-2018 ジャズアルバム  ベスト30 】その2(順位なし)

 

 

 

Woody Shaw『Woody Shaw with Tone Jansa Quartet』

 

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Ornette Coleman『Virgin Beauty』

 

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Cecil Taylor『Dark to Themselves』

 

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John Scofield『Quiet』

 

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Gil Evans『Priestess』

 

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Charlie Haden『Ballad of The Fallen』

 

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Joni Mitchell『Shadow and Light』

 

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Cassandra Wilson『New Moon Daughter』

 

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Tigran HamasIan『Shadow Theater』

 

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Paul Motian『Garden of Eden』

 

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Paul Motian Erectric Be Bop Band『Europe』

 

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Pat Metheny Group『Still Life(Talking)』

 

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Charles Mingus『Cumbria & Jazz Fusion』

 

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Donny McCaslin『The Passion of Charlie Parker

 

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Uri Caine『urlight / prime light』

 

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Brad Mehldau,Mark Giuliana『Mehliana』

 

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Steve Lehman & Sélébéyone『Sélébéyone』

 

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Kurt Rosenwinkel『Heartcore』

 

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James Blood Ulmer『Are You Glad to Be in America ?』

 

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John Zorn『Naked City』

 

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Don Cherry『Organic Music Society』

 

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Chet Baker『Chet’s Choice』

 

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Avishai Cohen『The Trumpet Player』

 

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Egberto Gismonti『Dança das Cabeças』

 

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Keith Jarrett『Standards Live』

 

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同『Survivors’Suite』

 

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Brad Mehldau『Largo』

 

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Brigitte Fonteine『Comme A La Radio』

 

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Weather Report『Mr. Gone』

 

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Joe Henderson『Porgy and Bess』

 

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選んでみると、ECM多いなあ。

70年代以降、最も質と量が安定していたのは、やはりココであると認めざるを得ないです。

複数になっている人は一枚ではわかりづらい人ですね。キース、メルダウ、モーシャンは一枚聴いてどうこう言っても仕方がない人です。

 

 

 

 

 

 

 

 

Music Magazine 2019.9 50年のジャズ・アルバム・ベスト100

 

 

1969-2018に出たジャズアルバムから、ベスト100を選出する。という企画が、『Music Magazine』でありました。

 

37人の選者にそれぞれ1~30位まで順位をつけたもを集計した結果です。

 

コレだと、いわゆるモダンジャズの巨人たちの大活躍する黄金期がゴッソリと抜け落ちるわけですね。

 

そこがとても面白いと思いました。

 

雑誌の創刊がたまたま1969年であるという事のようですが、結果として、モダンジャズセントラルドグマを外して何が選ばれるのか。という内容となり、同時に、ジャズは「モーニンおじさん」と心中しない。というマニュフェストにもなってます。

 

詳しいランキングは、雑誌を見てのお楽しみですが、見たこともないようなランキングに、驚くと思います。

 

突然ですが、私もコレにならって、30枚選んでみました。ただし、順位はありません。

 

入手困難なアルバムも一部ありますが、中古店で探したり、再発を待てば入手できるものだと思います。

 

 

【1969-2018 ジャズベスト30】(同不順)

 


Ornette Coleman『Dancing in Your Head』

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Keith Jarrett『Death and The Flower』

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Henri Texier『Mad Nomad(s)』

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Joe Henderson『State of Tenor vol,1』

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Joe Zawinul『My People』

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Duke Ellington『Afro-Eurasian Eclipse

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Miles Davis『On The Corner』

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同『Get Up with It』

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同『In A Silent Way』

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Steve Coleman『Resistance is Futile』

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Carla Bley『European Tour 1977』

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Henry Threadgill’s Zooid『Up Popped Two Lips』

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狭間美帆『Dancer in Nowhere』

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高柳昌行阿部薫『集団投射』

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Roland Kirk『Volunteered Slaverly』

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Herbie Hancock『Flood』

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Wayne Shorter『Odyssey of Iska』

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Bill Evans『Paris Concert edition 1』

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Maria Schneider『Concert in Garden』

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Claus Ogerman, Micheal Brecker『Cityscape』

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菊地雅章『Susto』

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菊地成孔『南米のエリザベス・テイラー

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大友良英山下毅雄を斬る』

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Hal Wilner『That’s The Way l Feel Free』

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Kip Hanrahan『千夜一夜物語第二集』

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Gerald Cleaver『Adjust 』

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Bill Frisell『Blues Dream』

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Art Ensemble of Chicago『People in Sorrow』

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DCPRG『Franz Kafka’s Amerika 』

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Lionel Loueke『Gaia』

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