mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

CD3枚組の超大作でございます!

Kamasi Washington『The Epic』

 

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風貌が『マグマ大使』のゴアに似ている(わからない人はググってね)、カマシ・ワシントン。

 

 

 

えー、膨大なパースナルは一切省略(笑)。


ネットで調べてください。


いやはや、大変でした(笑)。


CD3枚組(笑)!


しかも、どれもこれも演奏の密度がハンパではなく、聴くの大変ですよ!!


この並々ならぬガチ感は、やっぱり、ある人の事を思い出さざるを得ませんよね。


ジョン・コルトレインです。


必ずしも、彼の音楽そのものを全編にわたってやっているのではありませんが、カマシのテナー真面目ぶり、本気ぶりは、やはり、ジャズ界きっての大真面目な人であった、コルトレインを思い起こさざるを得ません。

 

かなり大掛かりな基本編成に、ストリングスがついて、更にコーラス隊までつくような巨大な編成の曲は、正直、私には、ついていけませんでした。

 

なぜ、あそこまで音で埋め尽くさなくてはいけないのか(基本、カマシは音を埋め尽くすような音作りを好んでいるようです)、私には余りよくわからないんです。

 

後期ロマン派の巨大な編成の交響曲は、昔とても好きだったのですが、そういうものとも違うので、どう捉えたらいいのかよくわかりませんので、コメントできません。


私がコレはイイぞ。と、すぐに反応できたのは、3枚目ですね。


コレは、前述の大音響が押し寄せて来ないのと、多分、カマシのジャズメンとしてのホンネはココに溜め込まれているよね。ということがわかったからです。


よって、この文章は、主に、3枚目の演奏についての考察となりますが、結論から言えば、この3枚目だけでも、この作品を聴く意義は十二分にあり、全く損はないのだ。という事なんです。


よく、グラスパーたちと彼を一緒くたに語る言説があるようですが、カマシとグラスパーは、ジャズに対する考え方が明らかに違いますね。


グラスパーは、ヒップホップとジャズを融合させるためには、アドリブ・ソロも切り捨てますが、カマシは、テナー奏者という事もあるのでしょう、基本は、熱血ソロ吹きまくりで、彼が融合を試みているソウルやゴスペルであり、リズムは、60年代のポリリズミックなアクースティック・ジャズを基調としています。


コルトレインと違うのは、蕩尽するようなすさまじいソロを時にカマシは取りますが、彼は常にアルバムとしてのコンセプトや楽曲のサウンドを、時には疑問を感じるものの、彼なりの考えをキチンと貫いている事ですね。


コルトレインは、やはり、昔からのジャズメンですから、最期までプレイで何とかしようとしているんですね。


3枚目の一曲目は、なんと、アフロビートです。


とはいえ、フェラ・クティや息子たちがやっているまんまではなく、どちらかというと、アフロビート風味のインスト曲なのですが、コレがなかなかよいです。


三曲目は、なんと、ドビュッシーピアノ曲『ベルガマスク組曲』から一番有名な「月の光」をソウルフルに仕立てたインストで、これまたカマシのアレンジの才能を感じる、素晴らしいインスト。


そして、男女のヴォーカルが、公民権運動のカリスマ的な指導者であった、マルカムXを讃える、「マルカムのテーマ」。


しかし、本作の締めくくりである、「ザ・メッセジ」こそが、カマシのホンネでしょう。


全編にわたってポリリズムを駆使した、ややパンキッシュに爆走するようなリズムを受けた、カマシのテナーは、まさにコルトレインが乗り移ったように一心不乱に吹きまくります。


やっぱり、ジャズが好きなものには、コレはたまらないものがありますね。


ある意味、この尋常ならざるテンションまで持っていくための儀式とて、これだけ長いアルバムになってしまったのではないのか?とすら思えます。


しかし、コルトレインは、晩年には、いきなり60分ノンストップみたいな、とんでもない演奏をライヴでホントにやっていた事と比べてしまうと、どうなのだろうか?と、思うところはありますが、コルトレインは明らかにこういう演奏で寿命を縮めていたとしか思えませんから、カマシのやり方は、ある意味、真っ当な人間のあり方なのかもしれません。


とにかく、この「ザ・メッセジ」という、タイトルも気合が入りまくった曲を聴くだけでも、本作を聴く意義はありますから、とにかく、いっぺん、この振り切れた演奏を聴いてみてください。



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