ELLA FITZGERALD『Ella Fitzgerald Sings The Duke Ellington Songbook』(verve)
personnel; 各人ネットで調べるように!
recorded in New York, June 24, 25, 26, 27, 1957
マリリン・モンローとエラ。
オリジナルのvol.1, 2がそれぞれLP2枚組で、合計4枚組。という、ジャズヴォーカル史上空前の規模の大作アルバム。
ヴァーヴのオーナーであったノーマン・グランツはエリントンが大好きであるのは、エリントニアンをしきりに録音に起用していた事からも容易に想像つきます。
ヴァーヴの女王である、エラ・フィツジェラルドの伴奏をエリントンのオーケストラがつとめ、かつ、エリントン/ストレイホーンの曲をエラが歌うというアルバムは、口でいうのは簡単ですが、ヴァーヴはコロンビアやキャピトルのような大手のレーベルではありませんでしたから、そうやすやすと作れるアルバムではありません。
ヴァーヴのオーナー、ノーマン・グランツは、JATPというジャズでもなかりの大規模なイベントの主催者でもあるので、その利潤で製作費を捻出してたんでしょうかね。
エリントンというと、ヴォーカル入りの優れた作品があまりないというイメージがありますけども、その理由は簡単でして、エリントン/ストレイホーンの曲はキャッチーな癖にものすごく歌いづらという、とても一筋縄ではいくものないからです。
しかし、まるでヴォーカルを器楽のように操ってしまう、桁外れなテクニックと歌唱力を誇るエラならば。というのがこのアルバムのキモでして、コレが予想を遥かに凌ぐ出来映えなのですね。
この圧倒的なエラのヴォーカルを立てつつも、濃密に絡んでいくエリントンのオケ。
エリントンにとって、オケと拮抗するヴォーカルの出現はまさに理想的でしたが、お互い超多忙でしたし、製作費がバカになりません。
シナトラやナット・キングのように別格に売れまくるシンガーはいいですが、ジャズのアルバムの制作費は決して多くはありません(そもそも、そんなに売れるものではないです、ジャズのアルバムは)。
本作も、ジャズとしては日数かけてますが、それでも1957年のたったの4日です。
オリジナルはコレにオスカー・ピーターソン、ベン・ウェブスター、バーニー・ケッセル、レイ・ブラウンなどのスモールコンボをバックとした、1956年と57年の、ハリウッドのキャピトルスタジオで録音された2日間のセッションを加えてますけども、CD化される際にこのセッションは完全に分けられる形で発売される事が多いので、ココでは、スモールコンボの演奏は割愛して語る事とします。あしからず。
さて、この1957年のニューヨークで録音された録音に際し、エリントンとストレイホーンは、わざわざ、このためだけに新しくすべての録音のアレンジを考えていますね。
これまでのアレンジの使い回しはほとんどしていないようです。
エリントンが如何にエラとの共演を望んでいたのか、よくわかります。
エリントンは、当時、コロンビアと契約し、毎回趣向を変えて録音していたので、これとても決してラクない作業ではなかったはずですし、コレをやりながら、オーケストラのツアーもやっていたんですから、まったくもって超人的ですなあ。。
前述の通り、エリントン/ストレイホーンの難曲に歌詞がついて(昔からついているものもありますけども)、ここまで圧倒的に歌われてしまうと、ほとんどのジャズヴォーカリストは、ちょっとレパートリーに加えるのにたじろぎますよね。
事実、このアルバムが出て以降、エリントンと共演しようというヴォーカリストはメッキリ減りますし、スタジオ録音のアルバムの形では、ジャズではないものにヴォーカルが参加しているという形になっていきますね。
それほどまでに本作のクオリティは凄まじく、未だに巨大な壁として君臨しているのではないでしょうか。
であるが故に、エリントンではない事を追及していくのが、ジャズヴォーカルの世界という事に暗黙の内になっていったような気がしますね。
とはいえ、「I Got It Bad」はエリントン 専属の歌手であった、アイヴィー・アンダーソンのバージョンの方がよいですね。
エラだとちょっとシツコクなってしまいますね。
エリントン・オーケストラによる、エラに捧げられた組曲「Portrait of Ella Fitzgerald」はエリントン・オーケストラのみの演奏となり、「EとDのブルース」のみ新曲です。
ジャズヴォーカリストではない人でエリントンと共演して欲しかったのは、私個人は美空ひばりでして、超多忙な両者が共演したら、さぞ素晴らしかったであろうなあ。と思うのですが。
ちなみに、エラとは1966年にヨーロッパでのライヴでの共演があります。