mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

デイヴィッド・ボウイとの共演がもたらした意味を考える!

Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(agate)

 


Personnel;

Jason Rigby(ts,vo),

Fabian Almazan(b,vo),

Chris Morrissey(b,vo),

Mark Guiliana(drms,vo)

 

Gretchen Parlato, Jeff Taylor, Marley Giuliana(vo)

 

recorded at The Banker Studio, Brooklyn, NY in October 27-28, 2016

 


マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットの第二作目で、早速、ピアニストがシャイ・マエストロか、ファビアン・アルマザンに変わっているが、何よりも驚くのは、このカルテットの音楽的な変化、成長ぶり。

 

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ファビアン・アルマザンはキューバ出身のピアニストで、主にアメリカで活躍しています。

 


前作は「恐ろしくキメの細かい新主流派」とも言える、非常に微細な表現が際立った作品だったが、本作はとりわけジュリアナのドラマーとしての凄みがわかりやすい形で提示されていて、こちらの方が一般ウケしやすいかも。


そんなアグレッシブなドラムに煽られまくるバンドか滅法燃え上がるのが、やはり、ジャスファンにはたまらないものがありますですね。


「Inter-Are」の3拍子と4拍子のクロスリズムはどこかモロッコのグナワという音楽を思わせ、実にカッコいい。


もっとこういう演奏を聴いてみたい気がします。


グシャグシャに燃えがっている感じではなく、実にグリッドが細かくて、演奏は相変わらず恐ろしく精緻であり、根底はとてもクールですが。


ファビアンのピアノはそんなに個性的というか感じではないんですども、実にツボを心得た演奏でして、シャイよりもこのバンドには合っているような気がします。


テナーも前作よりも遥かにアグレッシブで表情がよく出てますね。


ジュリアナにとって、前作と本作の間にあった一番大きな出来事は何と言っても、デイヴィッド・ボウイの遺作『★』への参加でしょう。

 

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遺作『★』発表後に亡くなった、デイヴィッド・ボウイ。しかも、大傑作アルバムなのでした。

 

このアルバムには、マリア・シュナイダー・オーケストラのメンバーの一部が参加し、更にジュリアナも参加したのですが、このレコーディングはジャズメン達に大きな影響を与えたようで、その後、ダニー・マキャスリン、マリア・シュナイダーが発表したアルバムはとても素晴らしかったんですが、本作もまた表面上に、『★』をなぞったような所は全くありませんが、もともと凄かったジュリアナに更なるシャクティパットがボウイによって授けられたような一皮剥けた演奏を感じざるを得ないんですね。


同じ事はマキャスリン、シュナイダーにも感じます。

 

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現役最高峰のジャズ・オーケストラのリーダー、マリア・シュナイダー

 

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マリア・シュナイダーとマーク・ジュリアナの共演も『★』の共演も驚きでした。

 


まさか、ロックの大スターがジャズメン達に少なからざる影響を及ぼし、しかも、『★』はボウイの最高傑作と言ってもよい出来であり、その後の参加者のアルバムも素晴らしい。というのは、ジャズ史とロック史の痛快事ではないでしょうか。

 

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