mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

vol.12のセットリストです!

エリントンすごいぜ! Vol.12

銀河鉄道 AAA で行こう~

 

 

1.宇宙に触れた/触れなかったジャズメンたち


1)Space is The Place(Sun Ra)
Space Ethnic Voices
June Tyson, Ruth Wright, Cheryl Banks, Judith Hoton(vo)
Sun Ra and His Astro Intergalactic Infinity Arkestra
Aki Tal Ebah(vo), Kwame Hadi(tp), Marshall Allen(as), Danny Davis(as), John Gilmore(ts, vo), Danny Thompson(bs), Eloe Omoe(bcl),

Sun Ra(space organ, p,arr),

Pat Patrick(b), Lex Humphries(drms),

Atakatun(perc), Odun(perc)
Recorded at Streetville Recording Studio, Chicago, Illinois in October 19 and 20, 1972

 

2)Om (John Coltrane)
John Cotrane(ts,ss),

Pharoah Sanders(ts,shells?,gong?) ,

Joe Brazil(fl),

McCoy Tyner(p), Jimmy Garrison(b),

Donald Rafael Garrett(b,bcl,mbira?), Elvin Jones(drms)
Recorded at Camelot Sound, Seattle, Washington in October 1, 1965 (rereased in January or early February, 1968)

 

3)Hat and Beard(Eric Dolphy)
Eric Dolphy(bcl), Freddie Hubbard(tp), Bobby Hutcherson(vib), Richard Davis(b), Tony Williams(drms)
Recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey in February 25, 1964

 

4)Untitled Duet(Mary Parks, Henry Vestine)
Alert Ayler(Bagpipes), Henry Vestine(g)
Recorded at Plaza Sound Studios in New York in August 26-29, 1969


5)Star People(Miles Davis)
Miles Davis(ts,keys), Bill Evans(ts),

Mike Stern(g), Marcus Miller(el-b),

Al Foster(drms), Mino Cinelu(perc),

Gill Evans(arr)?
Recorded at Columbia Studio B , New York, in September 1, 1982

 

 

2.黒人ミュージシャンは何故宇宙に向かうのか

 

6)P.Funk(Wants to Get Funked Up)(George Clinton, Bootsy Collins, Bernie Worrell)
George Clinton(vo),

Bernie Worell(keys, Synth, el-p, p,org etc. horn arrengement),

Bootsy Collins(b,g, perc, vo, ),

Gary Shider,(g) ,

Michel Hampton, Glenn Goins(g), Cordell Mosson(b), Tiki Fulwood(drms), Jerome Brailey(drms),

Gary Cooper, Debbie Edwards, Taka Kahn, Archie Ivy, Bryna Chimenti, Rasputin Boutte, Pam Vincent, Debra Wright, Sidney Barnes(backing vocals)
Randy Brecker(tp), Fred wesley(tb), Maceo Parker(as), Micheal Brecker(ts), Joe Farrell(ts)?, Boom(as)?

Recorded at United Sound, Detroit, Michigan and Hollywood, Sound, Hollywood, California in March-October 1975

 

7)Moon, Turn The Tides...Gently Gently Away(Jimi Hendrix)
Jimi Hendrix(g, vo), Noel Redding(b), Mitch Mitchell(drms), Chris Wood(fl)
Recorded at Olympic Studios, London ,The Record Plant, New York, and Mayfair Recording Studios, London
in July &December 1967 and January & April-August, 1968

 

8)Planet Rock(Arther Baker, John Robie, Soulsonic Force, MC G.L.O.B.E.)
Afrika Banbaataa, Ellis Williams, John Byas, John Miller, Mr. Biggs, Robert Darrell Allen

 

9)Thug Irony(Theo Parrish)
no data

 

 

3.エリントンと宇宙

 

10)Moon Voyage(Ellington)
Ellington(vo, ceteste)
Recorded at National Recording Studio, New York in July 14, 1969

 

11)Spaceman(Ellington)
Clark Terry(flh), Quentin Jackson,

Britt Woodman(tb), John Sanders(vtb), Jimmy Hamilton(cl), Paul Gonsalvez(ts), Ellington(p), Jimmy Woode(b),

Sam Woodyard(drms)
Recorded at Columbia 30th street Studios, Manhattan, New York in April 3, 1958

 

12)Midnight Sun(Sonny Burke, Lionel Humpton, Johnny Mercer)
Clark Terry(flh),

Quentin Jackson, Britt Woodman(tb),

John Sanders(vtb), Jimmy Hamilton(cl), Paul Gonsalvez(ts),

Ellington(p), Jimmy Woode(b),

Sam Woodyard(drms)
Recorded at Columbia 30th street Studios, Manhattan, New York in April 2, 1958

 

13)Take The “A”Train(Strayhorn)
Clark Terry(flh), Quentin Jackson,

Britt Woodman(tb), John Sanders(vtb), Jimmy Hamilton(cl), Paul Gonsalvez(ts), Ellington(p), Jimmy Woode(b),

Sam Woodyard(drms)
Recorded at Columbia 30th street Studios, Manhattan, New York in April 2, 1958

 

4.同じ頃に

14)Miles Ahead(Miles Davis, Gil Evans)
Miles Davis(flh),

Gil Evans(conductor, arranger)
Bernie Glow, Ernie Royal, Louis Mucci, Taft Jordan, John Carsi(tp),

Frank Rehak, Jimmy Cleveland,

Joe Benett(tb), Tom Mitchell(btb),

Willie Ruff, Tony Miranda,

Jim Buffington(frh), Bill Barber(tuba), Lee Konitz(as), Danny Bank(bcl), Romeo Penque(fl, cl), Sid Cooper(fl,cl), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b),

Art Taylor(drms)
Recorded at Columbia 30th Street Studios, Manhattan, New York in May 10, 1957

 

 

参考 CD


1)Sun Ra『Space is The Place』(Blue Thumb→Impulse!)

2)John Coltrane『Om』(Impulse!)

3)Eric Dolphy『Out to Lunch !』(Blue Note)
4)Albert Ayler『The Last Album』(Impulse!)
5)Miles Davis『Star People』(Columbia)

6)Parliament『Mothership Connection』(Casablanca Records)

7)The Jimi Hendrix Experience『Erictric Ladyland』(Track Records→MCA→Sony)

8)V.A.『The Tommy Boy Story, vol.1』(Rhino Entertainment Company)

9)Theo Parrish『American Intelligence』(Sound Signature)

10)Duke Ellington『The Intimate Ellington』(Pablo)

11)~13), Duke Ellington’s Spacemen『The Cosmic Scene』(Columbia→WaxTime)

14)Miles Davis『Miles Ahead』(Columbia)

 

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デイヴィッド・ボウイとの共演がもたらした意味を考える!

Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(agate)

 


Personnel;

Jason Rigby(ts,vo),

Fabian Almazan(b,vo),

Chris Morrissey(b,vo),

Mark Guiliana(drms,vo)

 

Gretchen Parlato, Jeff Taylor, Marley Giuliana(vo)

 

recorded at The Banker Studio, Brooklyn, NY in October 27-28, 2016

 


マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテットの第二作目で、早速、ピアニストがシャイ・マエストロか、ファビアン・アルマザンに変わっているが、何よりも驚くのは、このカルテットの音楽的な変化、成長ぶり。

 

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ファビアン・アルマザンはキューバ出身のピアニストで、主にアメリカで活躍しています。

 


前作は「恐ろしくキメの細かい新主流派」とも言える、非常に微細な表現が際立った作品だったが、本作はとりわけジュリアナのドラマーとしての凄みがわかりやすい形で提示されていて、こちらの方が一般ウケしやすいかも。


そんなアグレッシブなドラムに煽られまくるバンドか滅法燃え上がるのが、やはり、ジャスファンにはたまらないものがありますですね。


「Inter-Are」の3拍子と4拍子のクロスリズムはどこかモロッコのグナワという音楽を思わせ、実にカッコいい。


もっとこういう演奏を聴いてみたい気がします。


グシャグシャに燃えがっている感じではなく、実にグリッドが細かくて、演奏は相変わらず恐ろしく精緻であり、根底はとてもクールですが。


ファビアンのピアノはそんなに個性的というか感じではないんですども、実にツボを心得た演奏でして、シャイよりもこのバンドには合っているような気がします。


テナーも前作よりも遥かにアグレッシブで表情がよく出てますね。


ジュリアナにとって、前作と本作の間にあった一番大きな出来事は何と言っても、デイヴィッド・ボウイの遺作『★』への参加でしょう。

 

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遺作『★』発表後に亡くなった、デイヴィッド・ボウイ。しかも、大傑作アルバムなのでした。

 

このアルバムには、マリア・シュナイダー・オーケストラのメンバーの一部が参加し、更にジュリアナも参加したのですが、このレコーディングはジャズメン達に大きな影響を与えたようで、その後、ダニー・マキャスリン、マリア・シュナイダーが発表したアルバムはとても素晴らしかったんですが、本作もまた表面上に、『★』をなぞったような所は全くありませんが、もともと凄かったジュリアナに更なるシャクティパットがボウイによって授けられたような一皮剥けた演奏を感じざるを得ないんですね。


同じ事はマキャスリン、シュナイダーにも感じます。

 

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現役最高峰のジャズ・オーケストラのリーダー、マリア・シュナイダー

 

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マリア・シュナイダーとマーク・ジュリアナの共演も『★』の共演も驚きでした。

 


まさか、ロックの大スターがジャズメン達に少なからざる影響を及ぼし、しかも、『★』はボウイの最高傑作と言ってもよい出来であり、その後の参加者のアルバムも素晴らしい。というのは、ジャズ史とロック史の痛快事ではないでしょうか。

 

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現在のジャズを考える上で重要なアルバム!

John Simon『Journey』(Werner Bros.)

 

Personnel;

John Simon(p, vo, arr),


Randy Brecker(tp),

Dave Bergeron(tb),

Dave Poe(cl),

David Sanborn(as),

Terry Eaton(ts),

Howard Johnson(bs, bcl, flh),

Dave Holland(b),

Dennis Whitterd(drms)


only “Poem to Eat”

Amos Garrett(g),

Bill Rich(b), Billy Mundi(drms)


recorded at A&R Studios, New York, in August 8-10, 1972

 

only “Poem to Eat” is recorded

at Bearsville Studio,Woodstock,

in September 1971

 


ジョン・サイモンはミュージシャンというよりも、むしろ、プロデューサーとしての活動の方がメインでして、一般的な知名度は決して高くはないですけども、The Band『Music from Big Pink』、『The Band』、Bobby Charles『Bobby Charles』のプロデューサーであると言えば、かなりの人は「ああ、あのアルバムのプロデューサーか!」とピンとくる人はいるかもしれません。

 

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ジョン・サイモンは最重要のプロデューサーの1人です。

 


本作は、そんな彼が発表したソロ第二作目のアルバムです。


ジャズのアルバムではないのですが、ではロックなのか?と言われると、そうではなく、当時のロックファンのほとんどは、このアルバムをどう捉えていいのか戸惑っているのがライナーノーツから伝わってきますけども、それは仕方がない事だと思います。


同じ頃のランディ・ニューマンもロック色のほとんどないアルバムを作っていますけども、それとも違う高踏的な雰囲気がします。


基本に据えられているのは、ジョン・サイモンのピアノの弾き語りなので、一応、SSWと言えると思いますが、そのサウンドは参加メンバーを見てお分かりのように、完全にジャズの方に思い切り振り切っており、その辺がロックファンを混乱させたのだと思いますが、このアルバムがついぞロックファンの中で評価されて売れた。という話は聞いた事がないです。


メンバーの多くが、ギル・エヴァンズ・オーケストラの主要メンバーであり、更にランディ・ブレッカー、そして、ベイスにデイヴ・ホランドなのですから、どうやってもロックにはなりません。


強いていうと、アコースティックなスティーリー・ダンではありますね(笑)。


ただし、こちらの方が幾分土臭く、フォーキーでくつろぎがあります。


このどこにも属さないような孤高なあり方は、一部の人々に根強く支持されており、1990年代には日本でも再評価されています。


で、話が唐突に変わるのですが、この不思議なフュージョン音楽(ジャンルとしてのフュージョンではなく)は、私は案外、今日のジャスのあり方にとても影響を与えているような気がしているんですね。


いろんな音楽的要素が実にクールにブレンドされていて、演奏している人たちも、あまり音楽的なジャンルというものにこだわりがないのですが、出てくる音楽はものすごくハイクオリティというは、すごく今日的であり、その意味でも、本作は早すぎた傑作であり、現在のジャズのルーツを知る上での重要なアルバムの1つだと思います。


全体の通じて、ホランドの太っといベイスラインが全体を引き締め、サンボーンの誰が聴いても「サンボーン!」と変わる、あの特有のタメとコブシの効いたアルトサックスと恐らくはサイモンが自ら行ったであろうホーンアレンジのレトロモダンな響きがじつに素晴らしいです。

 

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ギターの神様、エイモス・ギャレット。

 


活躍はとても少ないですが、エイモス・ギャレットのとろけるようなギターがニクいです。

 

ちなみに、最後の曲は、ギル・エヴァンズのライブアルバム『Priestess』でも取り上げられました(プロデューサーはジョン・サイモンです)。


音楽を聴く姿勢が柔軟な方にこそオススメしたいアルバムです!

 

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タル・ファーロウの地味な世界!

Tal Farlow『Tal』(verve)

 


Personnel;

Tal Farlow(g), Eddie Costa(p), Vinnie Burke(b)

 

recorded in New York, March, 1956

 


現在のジャズを聴いている人には、「ジャズギターというのは、実はとても地味ない世界なのですよ」というと、ほとんどの人は信じられないと思います。

 

というのも、パット・メスィーニ、ジョン・スコフィールドビル・フリゼールという、現在のジャズギターを確立したであろう、3人の後のギターの隆盛、もしくは、フュージョンにおけるギターの大活躍(年齢を感じますなあ)を見るだに、それは信じ難いでしょう。

 

では、それ以前は?と考えると、著名なジャズギタリストは極端に少ないのではないでしょうか。

 

モダンジャズに限って言えば、ウェス・モンゴメリーケニー・バレルジョー・パス、そして、1990年代くらいから再評価された、グランド・グリーンくらいしか思いつかないのではないでしょうか。

 

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ウェス・モンゴメリー

 

戦前だと、チャーリー・クリスチャン以外を思いつくのはなかなか困難です。

 

というのも、戦前はアンプがなく、すべて生音で演奏していたんです。

 

ですので、ギターは、管楽器やドラムに音が負けてしまいます。

 

ましてや、戦前のジャズのメインはビックバンドですから、ギターは目立ちません。

 

録音では、ギターよりもバンジョーが重宝されてました。

 

1920年代のビックバンドはバンジョーの録音がとても多いですね。

 

なぜかというと、生音がデカいんですよ、バンジョーって(笑)

 

で、その役割は、録音ではドラムが盛大に叩けないので、その代わりにベイスとともにリズムを刻む事が求められ、ソロを取る事は少ないです。

 

よく、ピアノ、ギター、ベイス、ドラムスを「リズムセクション」と呼びますが、バンジョーに求められているのは、リズム楽器です。

 

バンジョーは西アフリカの伝統楽器、ンゴニが元になっていると言われますが、実はンゴニもリズムを刻むのが主要のものであるようで、現在の西アフリカのミュージシャンが自在にソロを弾きこなすようになったのは、比較的新しい事のようなんです。

 

録音技術の向上によって、ベイスの音がよく録れるようになるにつれて、バンジョーはギターに変わっていくのですが、やっぱり役割の基本はリズムを刻む事であり、ソロが与えられる事は、少なくとも録音では少ないです。

 

生演奏でも、そんなに長いソロがあったとは考え難いです。

 

エリントンのオーケストラでも、長年在籍していた、フレッド・ガイには、脱退するまでほとんどソロはないですし、ガイが脱退してから、オーケストラにギタリストはもう補充されませんでした。

 

逆にカウント・ベイシー・オーケストラのように、ひたすらリズムを刻む事でオーケストラの最重要メンバーとなっていたフレディ・グリーンという稀有な例はあります。

 

という事で、かようにジャズにおけるギターの役割は地味でした。

 

コレをソロ楽器に突然飛躍させたのが、先ほど出てきたチャーリー・クリスチャンでして、彼は何をしたのかといいますと、アンプでギターの音を増幅しましたて、あたかも管楽器のように長くソロを取り始めたんです。

 

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夭折の天才、チャーリー・クリスチャン

 


しかも、その元祖にして、いきなりとてつもなくクリエイティブなソロを取りまして、聴き手もジャズミュージシャンたちも驚嘆したんです。


クリスチャンは20代の若さで夭折してしまい、後のジャズギタリストのようにリーダー作を多く作ることがなかったのですが、彼の所属したベニー・グッドマン楽団やその選抜メンバーによる録音が残されていて、コレによってその驚異的な腕前はむしろ死後に知られるようになりました。


コレと、スモールコンボによって、コード進行に基づくアドリブソロをふんだんに取ることに主眼を置いたビバップが1940年代に勃興すると、ギターは次第にソロ楽器としても認識されるようになったんです。


しかし、それでもジャズギターはミュージシャンの個性を出しやすい、サキソフォン奏者のようには増えませんでした。


というのも、ジャズギターはアンプでただ音を増幅しただけであり、ギターの演奏の個性はギタリストの演奏のみにかかっていたんですね。

 
エフェクターもペダルも何もないんですよ、なぜか。


よって、ケニー・バレルのような独自のブルージーサウンドのある人、あるいは、驚異的なテクニックがあるにも関わらず、その演奏は極めてグルーヴィであった、ウェス・モンゴメリーのような、傑出した存在だけがジャス界にいるという感じになります。


で、ジャズ初心者にとって、ジャズギターは選択肢はめちゃくちゃ少なく、私も結局、ウェス・モンゴメリーが初めて購入したジャズギターなのでした(笑)


なので、白人ギターの世界というのは、更に渋い世界でなかなか手が出ないんです。


やはり、時代的にはメスィーニやスコフィールドという、ロック以降の世代を聴いたしまうんわけですね。


で、それもある程度まで行った先に見えてくるのが、ジム・ホールであり、その彼の前の世代になる、タル・ファーロウなんです(ようやく出てきました・笑)。

 

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タル・ファーロウ。手がめちゃデカいです!

 


タルは大変な名手ですが、そんな彼でも激闘の1960年代は事実上引退状態で音楽の仕事をしてなかったそうです。


タルの凄さはボンヤリ聴いていると単にスムーズに弾いているだけに聞こえるかもしれませんが、実は一音一音がものすごく強いですね。


コレはこの世代のジャズギタリストに共通してますけども、弦高がものすごく高く、要するに、弦がビンビンに張ってあるんです。


ビンビンという事は具体的にいうと、音を鳴らすための指の力が必要という事なんです。


ジャズはフレージングが速い曲が多いですから、淀みなく聴こえるという事は、それだけ相当な力で弾いているという事ですね。


しかも音は力強いかつ均一であり、非常に正確です。


コレを更にものすごいテクニックにしたのが、パット・マルティーノですが、こういうギターの元祖が、このタルなんです。


このパキッとした音で淡々と何でもないように弾き続けているところに、彼の魅力がありますが、コレがジャズ初心者にはなかなか気づきませんし、伝わりにくいですよね。。


彼の音の強さはソロでもわかりますが、実は、リズムでもわかります。


タルのソロが終わると、次はエディ・コスタのピアノソロになりますが、それとともに、常に「シャッ、シャッ」というリズムが聴こえてくるのが分かると思います。


私、コレを最初に聞いた時、「アレッ、コレはタルがまさかハイハットでも演奏しているのか?」と、とんだ聞き間違いをしてしまったんです(笑)

 

 

しかし、そう聞き間違えてしまうほど、タルのギターの刻みの音がデカいんですね。


もしかすると、この音を効果的に演奏に出したいので、ドラムズを入れない編成にしているのかもしれません。


コレは並のギタリストではできない事でして、驚異的な事です。


B面の最初の曲「イエスタデイズ」は全体の演奏の白眉だと思いますが、原曲のスローテンポなど一切無視して、猛然とものすごいBPMで演奏しますが、まるで山下洋輔にでもなったかのような、エディ・コスタのピアノの乱れ打ちが入るテーマの弾き方が実に面白く、このアレンジはエディ・コスタが咄嗟にやった事なのでしょうか。

 

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ヴィヴラフォン奏者でもある、エディ・コスタ


この打楽器のようなピアノの上で如何にも涼しい顔でギターを弾きまくるタルが実に素晴らしいんですね。


と、このように書いてもタルの魅力をどれくらい伝えたのか、心許ないのですが(笑)、こういう地味な味わいもまたジャズの密かな愉しみとしてある事を知っておくのも損ではないと思います。

 

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すごさは微細なところに宿る!

Mark Guiliana Jazz Quartet『Family First』(agate)


Personnel;

Jason Rigby(ts),

Shai Maestro(p),

Chris Morrissey(b),

Mark Guiliana(drms)


recorded at The Banker Studio, Brooklyn, NYC  in 2015 ?

 


現役最高峰のドラマーの1人である、マーク・ジュリアナによる、ワンホーン・カルテットです。


ジュリアナなので、何か捻りでもあるのでは?とか、勘ぐりたくなるわけですけども、驚くほど真っ当なモダンジャズである事にまずは驚いてしまいますが、彼の「ジャズ」という基準は、どうやら、1960年代のブルーノートに在籍していた、新主流と呼ばれるアルバムなのだなあ。というのは、聴きていて実にわかります。


ボンヤリ聴いていると、ホントに当時の録音と間違えてしまうかもしれません。


何しろ、テナーサックスのジェイソン・リグビーがコルトレインとジョー・ヘンダーソンにものすごく似ているので、余計にそう思えます。

 

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ジェイソン・リグビー。


しかし、ディテールをよく聴くと、1960年代のジャズとは全く別モノでして、持っているテクニックのイディオムが恐ろしく更新されていて、より緻密で繊細になっています。


それらは、決して派手ではないんですけども、ジャズを聴き込んで来たものには明らかに、「コイツらは何か違う!」とわからせるものがありますね。


こういう非常に微細な世界を表現するというのは、実に大変な事であり、それほどジャズを聴き込んでいない人には、その凄さがわかりにくいかもしれません。


普通にジャズやってるのでしょ?と表面上は見せておいて、現在の圧倒的なテクニックに裏打ちれた、敢えて血の滲む努力と根性を見せずに、涼しく、軽やかにやっているかのように見せるのは、相当な自信があっての事ですし、ワザワザ、現在に於いて、「Jazz Quartet」と名乗っているのは彼らの矜持そのものなのでしょうね。


ジュリアナのドラミングはもうどこがどうこうというものではなく、異次元の水準であって、現在におけるジャズというもののドラマーに求められる技術水準が明らかに変わってしまった。というものであり、かつてのような、エルヴィン・ジョーンズが素晴らしいとかフィリー・ジョーキレのあるドラムは衝撃的だ。みたいな、単にニューフェイスを見て喜んでいたような事ではない、とてつもないものを感じます。

 

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敢えて言ってしまうと、トニー・ウィリアムズ以来のドラムの革新を生み出した人物と後に言われるのではないのか?とすら思え、コレに匹敵するのが、クリス・デイヴでしょう。


このジュリアナのドラミングに最も反応しているのが、シャイ・マエストロですね。

 

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シャイは少し前まで、ベイシストのアヴィシャイ・コーエンのトリオのメンバーで、アヴィシャイの作曲する、一体何拍子なのか瞬時に聞き取る事が困難な曲を難なく弾きこなしていたようなピアニストで、私はブルーノート東京で演奏を見ましたが、とにかくたまげてしまいました。


そんな彼ですから、ジュリアナの、演奏を全部引っ張られるようなドラムが容赦なく煽り立てても、全く自分のペースを守って演奏しています。


ジュリアナ自身ももともとはアヴィシャイのバンドの一員であり、シャイと同じ時期に在籍していました。


テナーのジェイソン・リグビーの演奏は比較的オーソドックスで、コルトレインやジョー・ヘンダーソンが生み出した奏法はは今や、テクニックとして身につけられてしまっているという事に戦慄しますが、彼がオーソドックスに吹くので、ジュリアナのドラミングの特異性が際立つ演出になっているのではないかと思います。


敢えてこのように吹いているように私には思えます。

 

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クリス・モリセイ。

 

かつてのジャズメンには、そういう選択肢はあまり考えられませんが、現在のジャズメンの多くは音大などで技術を習得していますから、バンドの構想に奏法を合わせるようなあり方がもう普通になっていますね。

 

現在のジャズで一番変わったのはリズムでして、その事にピアニストは適応できていますが、サックス奏者の多くが適応できていないのが実情でして、ジュリアナもその事を踏まえての当時の選択なのかもしれません。

 

アヴィシャイ・コーエン・トリオからアヴィシャイが抜け、そこにサックスとベイスを加えた、このグループは、今のところ、2作のアルバムが出てますが、デビュー作からこの驚異的なクオリティというのが、すごいですね。


コレは第二作目も聴かなくてはならないでしょう。

 

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「アメリカン・トリオ」のライヴです!

Keith Jarrett, Charlie Haden, Paul Motian『Hamburg ‘72』(ECM)

 


Personnel;

Keith Jarrett(p, ss, fl, perc),

Charlie Haden (b),

Paul Motian(drms, perc)


recorded live at The NDR-Jazz-Workshop in Hamburg, June 14, 1972

 

 

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ハンブルグに本拠地を持つ公共放送局、NDR(Norddeutcher Rundfunk 北ドイツ放送協会)のテレビ番組、「Jazz Workshop」の1972年6月14日のスタジオライヴが。2014年にECMから発売されました。


キースのトリオというと、ギャリー・ピーコックとジャック・ディジョネットのものが有名ですが、その前に、チャーリー・ヘイデンとポール・モーシャとのトリオがありました。


1960年代末から活動が始まっているようで、アトランティックからアルバムがでているんですけども、現在ではあまり注目されていないようです。


このトリオにデューイ・レッドマンを加えたのが、いわゆる、「アメリカン・カルテット」(厳密にいうとカルテットではないですけど)なのですが、このトリオもピアノトリオとは言えないのですね。


というのも、キースはピアノ以外の楽器を演奏していることが多く、ポール・モーシャンもパーカッションの演奏も行います。

 

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よって、このトリオは、もはやピアノトリオとは言いがたく、その音楽性を考えると、むしろ、「アメリカン・トリオ」と言うのが正しく、これを拡大させたのが、「アメリカン・カルテット」と考えた方が良さそうです。


ベイスとドラムズが変わると、こんなにも音楽性が変わるのか。というくらいに、1980年代のトリオとは違立てますね。

 

「スタンダード・トリオ」ではキースはピアノに専念してますし、もはや、キース自作曲を演奏する事もほとんどなくなりました。


この「アメリカン・トリオ」のライヴはいい意味でラフで開放的であり、スタンダード・トリオ」のような濃密なアンサンブルではないです。


キースがかなり頻繁に楽器を持ち替えているので、行き当たりばったりの演奏ではなく、演奏の展開はある程度決めてはいると思いますが、先程書いたように、演奏はカチカチのキメキメではない、ルーズさがとてもいいです。


恐らく、決め手となっているのは、ポール・モーシャンの、手数の少ない、一聴、雑に聞こえる、隙間の多いドラミングであり、演奏に絶妙な余白を作っていて、演奏が決して一点に集中しないようになっているのではないかと。

 

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チャーリー・ヘイデンの地面に根っこが生えているような安定感とショベルカーで地面を掘り返すような気持ちよさのあるベイスは、このトリオに安定をもたらし、その上でキースは好きなように絵を描いていますね。

 

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個人的には、このトリオの方がスタンダード・トリオよりも面白く思います。


キースのソプラノサックスは、やはり、彼のあの唸り声の延長であり、彼の歌そのものである事がよくわかります。


コレはフルートにも言えますが、要するに、キースからは歌心が溢れて溢れて仕方がなく、それに忠実であると、ピアノの演奏だけではもう収まりがつかないのでしょう。


ピアノを弾きながら、身体を捩らせ、唸り声を上げてしまうのも、結局、同じことなのでしょうね。


ECMが録音したものではないので、演奏があのキラキラと透明な音ではなく、より実際のこのトリオの音に近いのも嬉しいですね。


もう少し、このトリオのライヴ盤を聴いてみたいです。

 

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インパルスにしては意外にも肩肘張らないライブの快作!

Milt Jackson『That’s The Way It Is』(impulse!)

 


personnel;

Teddy Edwards(ts), Milt Jackson(vib),

Monty Alexander(p), Ray Brown(b),

Dick Berk(drms)

 


recorded at Shelly’s Manne-Hole, Hollywood, Carifornia, August 1 and 2, 1969

 

ミルト・ジャクソンといえば、MJQのメンバーとして有名ですが、並行して自身のリーダー作も出していたんですけども、コレもインパルス!から出された「シェリーズ・マンホール」でのライヴをアルバムにしたものです。


コレを聴くと、MJQでの非常に抑制されたおすましなヴァイブラフォンの演奏よりも、ミルトの持ち味はやっぱりコッチなのだな。というのがよくわかりますね。


まあ、ジャズを熱心に聴いている人には釈迦に説法みたいなものですけども、ミルトの名作『Milt Jackson Quartet』、キャノンボール・アダレイの名盤、『Things are Getting Better』などを聴いていれば、ミルトというのは、非常にソウルフルは演奏をする人である事はよく知られています。

 

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タメの効いたミルトの演奏はできそうでできないのです!

 


MJQのコンセプトは事実上、ジョン・ルイスによって決められており、ミルトも納得した上での演奏ですから、あれはあれで素晴らしいものです。


しかし、本来の持ち味を抑制し続けるというのは、やはり、ストレスだったのではないかと思うんですよね。


それが、MJQを離れたこういうライヴという場所で思い切り出てしまっているんですね。


MJQは売れっ子でしたので、ミルトにとってはギャラがよかったというのは、正直あったのでしょう。


結局、1974年の解散まで、彼は在籍しました。


ヴァイブラフォンはジャズではそんなにニーズがあるわけではなく(実際、名手と言える人はホントに少ないです)、1960年代はロックの大盛況もあり、ミルトとしては、MJQから離れるのは、得策ではないと考えたのでしょう(その後、MJQは再結成され、1999年に亡くなるまで、ミルトはMJQに在籍し続けました)。


実際、それによってMJQは名盤、名演を出していたので、よかったわけですね。


そんな彼がヒマな時に臨時で編成されたクインテットと思いますが、ドラマーのシェリー・マンの経営する、「シェリーズ・マンホール」で行われたライヴは、肩の凝らない快作として大変素晴らしいものです。

 

 

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ジャケット裏に載っている当時の「シェリーズ・マンホール」。

 


演奏の核を握るのは、「featuring 」とアルバムジャケットに書かれているだけあって、ズシンと重力感があってバンドを推進させる、レイ・ブラウンのベイスですね。 

 

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レイ・ブラウン。彼もオスカー・ピーターソンとのトリオで売れっ子でした。

 


彼もオスカー・ピーターソンの不動のトリオですから、ものすごく忙しかったのだと思います。


ライナーノーツを見ると、なんと、驚くべき事に、レイ・ブラウンはマネージャー業を副業としてたらしく、ミルトのマネージャーだったのだそうです(笑)。


よくそんなヒマがあるものだと。


お互いミュージシャンとして別々に行動していて、ヘタすると一方がアメリカにすらいない可能性すらあるのに、どうやってマネージメントしてたんでしょうか(笑)


結局、ブラウンが雇って別な人が事実上マネージャーだったかも知れません。


その辺が謎ですが(笑)、そんな忙しい合間を縫っての演奏という、慌ただしさはほとんど演奏からは感じることはなく、非常にリラックスした感じのいい意味でラフで普段着なライヴなのがいいですね。


テディ・エドワーズのいい湯加減のテナー、非常にハッピーなテイストのピアニストのモンティ・アレクサンダーがコレまたいいですね。


インパルスというと、どうしてもコルトレインのカラーが強いのですが、こんな当時のジャズの日常風景のようなアルバムも出ていたんですね。

 

 

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