Franco Ambrosetti『Heartbop』(enja)
personnel;
Franco Ambrosetti(flh),
Phil Woods(as, cl), Hal Galper(p),
Mike Richmond(b), Billy Hart(drms),
George Gruntz(arr)
recorded at Sound Ideas Studio, NYC on February 10 &11, 1981
このアルバムの購入のお目当ては、正直なところ、リーダーのフランク・アンブロセッティではありません。
やはり、フィル・ウッズなのですよ。
何しろ、活動にあまり好不調が激しくない安定感のある人ですしね。
その彼がヨーロピアン・リズム・マシン時代に戻ったかのように、ギンギンに吹きまくっているのです。
生涯にわたってほとんど現役だった、フィル・ウッズ。
恐らく、リーダーという責任のないところだからだと思いますが、なんとも嬉しいではないですか。
つい、「お目当てではない」とウッカリ述べてしまったアンブロセッティのフリューゲルホルンの端正でシッカリとしたテクニックの中にキチンと情熱を込めて吹きまくる演奏は、大変な実力者であり、聴きどころの1つと言ってよいです。
スイスのルガーノ生まれのアンブロセッティは、ヨーロッパを代表するトランペッター/フリューゲルホルン奏者です。
アンブロセッティの端正な演奏に対するギラギラとしたウッズのアルトがちょうどよい対比になっていて実に素晴らしいです。
イントロのピアノがジョン・コルトレイン・カルテットの「My Favorite Things」を思わせる、ハル・ギャルパー作曲の「Triple Play」は本アルバムの聞かせどころを端的にわからせてくれる快演。
ギャルパーのピアノの演奏も熱がこもって、大変素晴らしいです。
サイドメンに名手を入れて好き放題暴れさせる。というアイディアが本作の成功の1つであり、そのウッズに釣られてアンブロセッティやギャルパーの素晴らしさを知ることになるのもまた嬉し。
そして、本作を単なる名人たちの吹き比べ弾き比べ競争ではない、音楽的に優れたものにしているのは、ヨーロピアン・リズム・マシーンのメンバーであった、ジョルジュ・グルンツによるアレンジが効いている点も見逃せないでしょう。
アルバムタイトルに「ハートバップ」とあるように、「ハード」ではない、キメ細やかなバップとでも言えばいいのでしょうか、白熱しているのに、ギザギザとしていないバップに全体が仕上がっているのは、恐らくはグルンツの関与が大きいのだと思います。
ベルリン・ジャズ・フェスティバルの音楽監督を務めるほどの大人物である事は日本ではあまり知られていない、ジョルジュ・グルンツ。
B面の二曲目のみ、ウッズはクラリネットを吹いていますが、彼のクラリネットの腕前は大変なもので余技というレベルではないです。
ちなみに、クラリネットは、本作と同じ、エンヤから出ているウッズのリーダー作、『Three for All』という変則トリオアルバムでも聴く事ができます。
トミー・フラナガン(p), レッド・ミッチェル(b)との変則トリオによる傑作、『Three for All』もオススメです。