mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

『Sorcerer』と合わせて1つの作品です!

Miles Davis『Nefertiti』(Columbia)

 

personnel ;

Miles Davis(tp), Wayne Shorter(ts),

Herbie Hancock(p), Ron Carter(b),

Tony Williams(drms)

 

Recorded at 30th Street Studio on June 7, 22, 23 and July 19, 1967

 

『Sorcerer』と双璧を成す、マイルスの黄金クインテットの最終作品。

 

以後、マイルスは、少しずつエレクトリック化が始まっていきますが、初めて聴く方には、『Sorcerer』よりも、本作の方がわかりやすいかもしれません。

 

というのも、こちらは、ショーターの名曲「Nefertiti」と「Fall」という目玉がはっきりと存在するので、とらえどころがハッキリしています。

 

とはいえ、そのタイトル曲である、「Nefertiti」が一切アドリブがないと演奏で、延々とテーマをマイルスとショーターは繰り返し、リズムセクションがそれぞれに暴れ回るという、不思議なルール設定がされている演奏です。

 

その人を食ったような演奏の次に、美しい「Fall」が演奏されるのですが、コレもちょっと変わってまして、アドリブの合間に突然テーマの一部がスッと何度も差し込みながら展開していくという、誰も試みたことのないような変わった事をやってます。

 

それ以外はこのクインテットの普通にいい演奏が入っていて(ものすごいレベルの演奏という事です)、この2つの過激な実験のような事はしていません。

 

「Riot」のポリリズムがものすごいですが、過激な実験というよりも、「ポリリズムでここまでできる」という事ですね。

 

新曲ばかり演奏しているという事もあり、まだこなれていないので、比較的安全運転です。


「安全運転」でこの水準というのは、すごいですねえ。。

 

ハンコックがまたしてもバッキングをやめてますが、ロンはちゃんと4つ刻んで、トニーもおとなしめにリズムキープしている点が『Sorcerer』とは明らかに違います。

 

恐らくですが、この曲単位で行った実験の究極点がこの2曲であったということなのであり、マイルス・デイヴィスのキャリアの最高点は、この2曲にあると言ってもいいのかもしれません。

 

トータルコンセプトを重視した『Sorcerer』と1曲の実験をトコトン突き詰めた『Nefertiti』の優劣は容易にはつきかねますが、個人的な好みとしては前者を聴くことが多いでしょうか。


ジャケットをワザワザ当時の恋人のシシリー・タイソン(のちに奥さんとなります)とマイルスの顔をお互いに見つめ合うようにして作っているわけですから、コレは2つで1つの作品と考えるべきでしょう。


いずれにしてもジャズは1967年にとんでもないところに来てしまったんですね(ジョン・コルトレインが亡くなった年でもあります)。

 

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ジャズはとんでもないところに到達してしまいました!