mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

21世紀にこんなストレートな演奏があったのか!と驚くライヴ録音です!

Ali Belogenis Morris『Live at Tonic』(DIW)

personnel;

Louis Belogenis(ts,ss), Wilber Morris(b),

Rachied Ali(drms)

 

live recorded at tonic, New York City,

on January 6, 2001

 

 

どひーっ(笑)!


すごいアルバムでございます!


21世紀の初めに、ド直球のフリージャズですよ!!!


写真を見なければ、ルイ・ベロジェニス(と読むのでしょうか?)というサックス奏者が白人だとはわからないほどに、60年代のアフリカ系アメリカ人のように聴こえますし、そもそも、コレが2001年の演奏というのは、にわかに信じられないでしょうね。

 

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ベロジェニスは比較的世に知られるのに時間がかかったようですが、見事という他ありません。


何しろ、ドラムがコルトレインの最晩年のコンボで活躍してしたラシード・アリですので、ますます1960年代の黒人フリージャズだと思い込んでしまいます。


なぜ、今更フリージャズなのか?はさておき、ここまで何の衒いもなくフリーであるというのは、もはや清々しいものがあります。


ちょうど、1990年代から2000年代のジャズはジャズミュージシャンがみんなアタマが良くなりすぎて、ちょっとジャズが難しくて聴いてて疲れてしまう方向に向かっていた時期で、中には大変優れたものもあり、未だに愛聴するアルバムはあるのですが、それにしても、シンドイ作品が多かったように思います。


その中で、このアルバムは「戦略なし」という戦略で、とにかく果敢に吹きまくり、叩きまくり、弾きまくるんですね。


とはいえ、ジャズで演奏される楽器は所詮はアクースティックですから、ロックのような大爆音が出るわけではなく、実は、よく聴くと絶妙にスカスカしております。


本作は3人の演奏がダンゴになってぶつかり合っている事は実はあんまりなくて、そういう意味では、60年代のフリーをまんまやっているわけではなくて、ソウルミュージックみたいなわかりやすいノリではないですが、大ベテランのラシード・アリのドラムズは、見事なグルーヴを生み出してます。

 

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ラシード・アリは2009年に亡くなっています。


正直言いますと、私、コルトレインと共演している頃の彼の演奏はそんなによいと思っていなくて、故に、ドラマーとして彼の事を評価してなかったんですけども、この、はちゃめちゃになりそうで絶対にならない演奏に、ホトホト感心しました。


そのシッカリとした土台の上でベロジェニスのテナーとソプラノがあたかもアルバート・アイラーが乗り移ったかのようなブロウを連発する、この気持ちよさにハマると、もう、ジャズはやめられなくなります。


「アイラーが乗り移ったか」と言っても、単なるモノマネをしているんではなくて、ちゃんとベロジェニスの演奏になっていて、オリジナリティがあるのところが素晴らしいです。


ウィルバー・モリス(ウォーレン・ブッチ・モリスの兄です)は敢えて地味な演奏に徹していますが、それによってサックスとドラムズがちゃんと目立つように配慮しているところは、やはり、今日の演奏ですね。

 

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実はウィルバー・モリスは2002年に亡くなっています。


本作はタイトル通り、ニューヨークにかつて存在した「トニック」という大変有名なクラブでの演奏ですので(2007年に閉店しました)音響的には決して褒められたものではないですが、それ故に伝わってくる生々しさがダイレクトに伝わってくる、近年では珍しいライヴの傑作だと思います。


DIWから出ていたアルバムで、残念ながら現在廃盤ですが、適度な値段で中古で出回っています(amazonは法外に高いです)。


再発を強く希望します。

 

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