mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

オルガン好きには堪らないトリオです!

Delvon Lamarr Organ Trio『I Told You So』(Colemine)

 


personnel;

Delvon Lamarr(org),

Jimmy James(g),

Grant Schroff(drms)

 

recorded at Blue Mallard Recording Studio, Seattle, Washibgton, 2020?


まずもって驚いたのは、ジャズとして発売されたアルバムにも関わらず、いつ録音されたのが全く書いていないという事ですね。

 

コレは別にジャズでなくても、現在ではかなり珍しいですね。

 

発売が2021年の1月なので、録音は2020年に行われたものと推定されます。

 

編成を見て分かるように、1960年代に大量に作られた、オルガン、ギター、ドラムズのトリオ(ベイスはオルガンが担当するので、いないんですね)をそのまま継承したものですが、なんと、その音楽性も1960年代のソウルやR&Bの影響を正直に表明したトリオです。

 

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デルヴォン・ラマー(1978年、シアトル生まれ)のオルガンは決して弾きまくりではなく、アンサンブルを重視したものです。

 

リーダーのデルヴォン・ラマー以外のメンバーが一定せず、かなり頻繁に変わりますが、音楽性そのものは特に大きな変化はないようですので、あくまでもこのトリオの音楽性を決定しているのはラマーであるようです。

 

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ギターのジミー・ジェイムズとドラムズのグラント・シュロフとのコンビネーションは抜群ですが、もうメンバーではないです。


さて。


本作は、例えば、Booker T & The MG’sや、Metersといったオルガンが入ったインストバンドが好きな人が聴いて、キライになるのはほぼ不可能な音楽だと思います。


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白人と黒人の混成バンドだったのも画期的だった、MGズは素晴らしいインストバンドでした。そのままスタックスのハウスバンドでもありましたね。


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ミーターズのリズムは本当に画期的でした!

 


しかも、60-70年代のマナーにものすごく忠実で、何も知らなかったら、当時の音源と勘違いする人がいてもおかしくはないでしょう。


しかし、よくよく聴くと、ミュージシャンのテクニックがまるで違いますし、音楽を演奏する事の解像度が遥かに高く、要するに、一見レトロ志向に見せかけつつ、その実はかなり今日的な演奏です。


コレはジャズなのか?と言われますと、なかなか難しい問題があるのは確かだと思います。


ジャスに寄った演奏はほとんどせず、編成から伺えるような、ジミー・スミスのトリオの影響はほぼ感じませんし、むしろ、非常に高度なテクニックに裏打ちされたR&Bインストバンドと言った方がいいのかもしれません

 

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ブルーノートから大量にアルバムを発表したジミー・スミスのオルガンの演奏は、バド・パウエルをオルガンに置き換えたようなスタイルでした。


まあ、そういうかつてよく行われたうるさい議論よりも、このベタと言って良いくらいの非常に計算された真っ黒い音楽を聴いて、ブラックミュージックが好きな人で血が騒がない人は皆無でしょうね。


こういう音楽が何という事もなくジャズというフィールドでも愛好されるようになったというのは、私は良い時代になったと思いますし、ハッキリ言って愛聴盤ですね、コレは(笑)


こんなにシンプルに演奏しているのに、単調にならないというのは、並大抵の事ではないと思います。


コンビネーションは完璧なので、このメンバーでそのまま活動すればいいと思うのですが、現時点でもうベイス、ドラムズともに脱退しておりますね。


この辺はよくわかりませんが。


ジワジワと来る傑作。

 

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ブルーノートを意識したようなデザインもいいですね。