mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

Count Basie plays Albert Ayler

Count Basie & His Orchestra『Afrique』(Flying Dutchman)

 


personnel;

Paul Cohen, George Cohn,

Pete  Minger, Waymon Reed(tp, flh),

Steven Galloway,Bill Hughes,

Mel Wanzo, John Watson(tb),

Bill Adkins(as), Bobby Plater(as, fl),

Bob Ashton(as, bs, ts, fl),

Eddie Lockjaw Davis(ts),

Eric Dixon(ts,as), Cecil Payne(bs, fl),

Count Basie(p,org), Freddie Green(g),

Norman Keenan(b),

Harold Jones(drms),

Richard Landrum(perc), Sonny Morgan(bongos)

 

Hubert Laws(fl),

Bubby Lucas(harmonica),

John B. Williams(el-b),

Warren Smith, Jr.(marimba)

 

Oliver Nelson(arr, comp, cond, as)

 


recorded at RCA Studio A, New York, December 22 & 23, 1970

 

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アルバート・アイラーの曲を演奏するベイシー楽団!


と書くと、まさか、ドヒャグヒョ、ブキョーッ!!とホーン・セクションが大暴れし、フレディ・グリーンがエフェクターでギターを思い切り歪ませているのか?と思うかもしれませんが(笑)、スイングが血肉化しているこの楽団にそのような事は、決して起こりませんので、ご安心を(ちょっと聴いてみたかった気はしますが・笑。まさか、未発表録音にあるのでしょうか?)。


ただ、いつものベイシーに加えて興味深いのは、アレンジャーに、オリヴァー・ネルソンが入っている事で、いつになく演奏が黒く粘っています。

 

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43歳という若さで亡くなっているオリヴァー・ネルソン。


録音した1971年は、それこそブラック・ミュージックの黄金期ですので、ベイシーがそういう時流に全く無頓着であったとは思えず(ビートルズが大ヒットすると、ビートルズの曲を演奏したりする楽団ですので)、スイングの枠を残しつつ、もう少し、コンテンポラリーな音楽に接近してみようという考えが起こり、ネルソンを起用したのでしょうけども、どうもジャズファンには過小評価されている気がするオリヴァー・ネルソンの才気がみなぎった、実はベイシー楽団の異色傑作です。

 

実は、オリヴァー・ネルソンの作曲がメインなので、「オリヴァー・ネルソン作品集」なのですけども、

 

3.Step Right Up(Gabor Szabo)、4.Love Flower(Albert Ayler)、8.Japan(Pharoah Sanders)

 

がやはり目につきます。

 

アルバムタイトルが『Afrique』なのに、ラストが「Japan」なのがむしろツッコミどころですけども(笑)、全体的なテイストはむしろラテンです。


まあ、20世紀のアメリカ音楽は一時が万事この調子なので、今更どうこういう気もないですけども、とにかくゲストがやたらと豪勢で、かつ、全体のサウンドの方向づけがされています。


フルートにヒューバート・ローズがいるのも興味深いですが、なんと、ハーモニカにパカシュン、エレキベイスです。

 

目玉のアイラー曲でソロを取っているのは、なんと、オリヴァー・ネルソンでして、オーケストラをコンダクトしつつ、ソロも取りと大変なのですが、ネルソンのアルトはベイシー楽団のものとはかなり違っているので、彼が取るしかなかったのだと思います。

 

この多才すぎるところが(なにしろ、映画音楽まで作り、交響曲まで書いているんですよね)、一体何なのかわからない人になってしまったんでしょうかね。。


思えば、ベイシー楽団は、折り目折り目で優れたアレンジャーを起用し、時代への絶妙なアジャストに成功しているのですが(恐らく、これがなかったら、楽団は解散していたかもしれません)、ネルソンの起用もまさにそれだったのだと思います。

 

今の耳で聴けば、ベイシーよりもネルソン色が強い作品になっていると思いますけども、そこが評価の分かれ目になるでしょうが、私には好ましく思えます。

 

ただ、この路線は当時のジャスファンには余りウケがよくなかったのでしょう、売れたとか、評価が高いとかという話をトンと聞く事がないので、恐らくは全く売れなかったのでしょう。

 

ビジネスには、とてもシビアであったと思われるベイシーは、「この方向はやめよう」と判断したのでしょう、1970年代のベイシー楽団は、ノーマン・グランツのレーベルパブロで多くのアルバムを出し、その枠内でのバラエティに徹しました。

不思議とこのアルバムの多彩さは、同じ時期に発表されたエリントンの畢生の傑作、『Afro-Eurasian Ecripse』と共振するところがあるのも重要ですね。

最後の曲が「Japan」なのも『極東組曲』と同じと言えば同じです。

まあ、エリントンの「Ad Lib on Nippon」は、全然日本とは関係ないと思いますが(笑)

 

 

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