mclean-chanceの「Love Cry」

はてなダイアリーで長年書いてきたブログを移籍させました。生暖かく見守りくださいませ。

本作の聴きどころは、カーラ・ブレイの作曲、アレンジです!

Gary Burton Quartet with Orchestra『A Genuine Tong Funeral』(RCA)

 

personnel;
Gary Burton(vib), Larry Coryell(g),

Steve Swallow(b),

Lonesome Dragon(Bob Moses, drms),


Carla Bley(p,org,comp, arr, cond),

Mike Mantler(tp),

Jimmy Knepper(tb, btb),

Howard Johnson(tuba, bs),

Steve Lacy(ss), Gato Barbieri(ts),


recorded at RCA’s Studio B, New York City, 1968?

 


カーラ・ブレイ作曲の「歌詞のないオペラ」を、ギャリー・バートン・カルテットと、カーラ・ブレイ・オーケストラのリードとブラス・セクションを加えて演奏するという野心作。

 

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教育者としても大変な功績のある、ギャリー・バートンのヴィブラフォンの演奏はこれまでの演奏スタイルを一新するものでした。


ドラムのボブ・モーゼスの表記が「ロンサム・ドラゴン」になっているのは、カーラが、非常に細かく、どこでソロを取るのかを決める事にとても不満だったためであるようです。

 

当時のジャズは、やはり、腕に覚えのある人々が丁々発止で競う側面が強いので、実はモーゼスのような考え方のミュージシャンがむしろ普通であり、口に出しては言わずともカーラの手法に完全に納得して参加していなかったミュージシャンは他にもいたのかもしれません。


バートンとカーラがどのように出会ったのかの経緯はわかりませんが、もしかすると、カルテットのメンバーである、ラリー・コリエルが、カーラ・ブレイが1968年から録音を始めている、大作『Escalator over The Hill』に参加しており、彼からカーラの事を聴いて、共演したくなったのかもしれません。

 

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現在のジャズに与えた影響は計り知れない、カーラ・ブレイ。2023年に惜しくも亡くなりました。

 


若くして完成されたテクニックを持つバートンは、最早、その興味がジャズを飛び越えており、フリージャズのコミュニティに所属しつつ、「フリージャズの再編成」を考えていたカーラには、遅かれ早かれ興味を持ったと思いますが、この作品のリーダーは、明らかにカーラであり、バートンはその中のソリストの1人として機能してるアルバムです。


このような性質のアルバムなので、ある部分を抜き出して聴くというものではなく、アルバム全部を聴き通して評価すべきものです。


よって、バートンのヴィブラフォンを堪能したい。という方には第一にオススメするアルバムではないですけども、カーラ・ブレイの考える、「サウンドとしてのジャズの再構築」にバートンはかなり共感しており、その上でカーラの作品に取り組んでいるのがよくわかります。


私の好みは圧倒的にB面でして、フリージャズの持つ緊張感とカーラのメロディセンスが見事に融合した、濃密さがよく出ている名演で、恐らくは、同時期にコツコツと録音していた、カーラの大作、『Escalator 〜』を聴くたほ導入作品としても、大変重要です。


カーラやバートンの試みの新しさは、現代のジャズに於いては、狭間美帆などによって既に、ジャズを演奏する上での常識になってしまっているため、わかりにくいかもしれませんが、それは彼ら彼女らの狙いがそれだけ的を得たものであったからこそなのですね。

 

そこに、スティーヴ・レイシー、ガート・バルビエリと言った、唯一無比のソロイストが参加しているからこそ、カーラの作編曲が活きてくるのは、いうまでもありません。

 

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『Escalator over The Hill』の先行作品としても重要です!